トヨタ自動車の大量リコールがメディアを賑わしている。

 とはいえ、日本では主に経済ニュースとして扱われ、第一報とそのフォローが終わればもうヘッドラインで取り上げなくても・・・(もはや重要性は低下したかな・・・)、というメディア側の意識が透けて見える。

「アクセルペダルの戻りが悪い」リコールの対象車種には、「米国で最も多く販売されている乗用車」とされる「カムリ」の2007~2010年モデルも含まれる。北米市場には、ケンタッキー工場(TMMK)で製造した車両が供給されている。「レクサスES350」も機構面は同一車種と言ってよいが、生産は日本の九州工場。フロアマット問題では槍玉に挙がったが、アクセルペダルモジュールのリコール対象ではない(写真提供:Toyota Motors Sales, U.S.A.)

 ところが米国では、3大ネットワークのニュースショーやケーブルニュースの主要局をはじめとするメディアが「社会問題」として連日様々な形で取り上げ続けていることが、彼らのウェブサイトでも確認できる。

 日本のワイドショーのように煽情的に取り上げるメディア、例えば「アクセルが戻らなくなったら、どうしたらいいか」を実演してみせた番組もあるようだ。新型インフルエンザの大量感染は防げるか、というニュースのはずが、「手の洗い方」の実演に終始するのと似たようなものだが(苦笑)。

 いずれにしても、「トヨタの品質神話に疵がついた?」「現地生産の一時休止、販売の減退がトヨタの収益に影響?」などと、対岸の火事のような語り口で済ませていられるような状況ではない。

止まることができない車の中から悲痛な通報

 何ともショッキングなのは、米国の各局のニュースの中で繰り返し再生される、携帯電話からの911(日本の110番に相当)への悲痛な通報の録音。アクセルペダルが全開の状態から戻らなくなったまま、一般道を時速100キロメートル以上で走り続けるクルマの中からのものである。

米国人が好むジャンル、かつ、GM、フォード、クライスラーが利益の多くを稼ぎ出していた「フルサイズピックアップ」に参入すべく送り出した「ツンドラ」。全長5.3~5.8メートル、全幅2メートル、全高1.93メートルという巨体に4L・V6、4.6Lと5.7LのV8を積む。これも今回のリコール対象。インディアナ工場(TMMI)およびテキサス工場(TMMTX)で製造(写真提供:Toyota Motors Sales, U.S.A.)

 しかし、パニックに陥っているのは分かるけれども、クルマを止める方法は複数あった。おそらく米国のTVワイドショーでも、「もしも、そうなったら」と身振り手振りの説明が行われているのだろう。

 例えばATセレクターを「D(ドライブ)」から「N(ニュートラル)」へ1段戻すだけでもいい。エンジン回転が一気に上がるが、今日のエンジンはそういう時にリミッター(回転上昇抑制)が働くので、エンジンが壊れる可能性は低い。もし壊れたとしても、止まることの方が優先なのだし。マニュアルトランスミッションなら、クラッチを踏み込めば済むことだが。

 あるいは、ちょっと難しいけれど、イグニッションキーを「オフ」の位置まで回す。そのもう1段先まで回すとステアリングロックがかかってしまい、舵が動かなくなるので、かえって危険。

 そんなところまで頭が回らなくなっていても、実はブレーキを力いっぱい踏めば速度は落ちる。ただ、エンジンがスロットルバルブ(吸入空気量調整弁)全開で力を出している状態では、ブレーキの倍力装置の効果が落ちる。特に踏み直したりすると、同じ力でペダルを踏んでもブレーキが効かない状態になる。しかし、それでもとにかく床も抜けよとばかりペダルを踏み込めばいいのだ。