トヨタ自動車の大量リコールがメディアを賑わしている。
とはいえ、日本では主に経済ニュースとして扱われ、第一報とそのフォローが終わればもうヘッドラインで取り上げなくても・・・(もはや重要性は低下したかな・・・)、というメディア側の意識が透けて見える。
ところが米国では、3大ネットワークのニュースショーやケーブルニュースの主要局をはじめとするメディアが「社会問題」として連日様々な形で取り上げ続けていることが、彼らのウェブサイトでも確認できる。
日本のワイドショーのように煽情的に取り上げるメディア、例えば「アクセルが戻らなくなったら、どうしたらいいか」を実演してみせた番組もあるようだ。新型インフルエンザの大量感染は防げるか、というニュースのはずが、「手の洗い方」の実演に終始するのと似たようなものだが(苦笑)。
いずれにしても、「トヨタの品質神話に疵がついた?」「現地生産の一時休止、販売の減退がトヨタの収益に影響?」などと、対岸の火事のような語り口で済ませていられるような状況ではない。
止まることができない車の中から悲痛な通報
何ともショッキングなのは、米国の各局のニュースの中で繰り返し再生される、携帯電話からの911(日本の110番に相当)への悲痛な通報の録音。アクセルペダルが全開の状態から戻らなくなったまま、一般道を時速100キロメートル以上で走り続けるクルマの中からのものである。
しかし、パニックに陥っているのは分かるけれども、クルマを止める方法は複数あった。おそらく米国のTVワイドショーでも、「もしも、そうなったら」と身振り手振りの説明が行われているのだろう。
例えばATセレクターを「D(ドライブ)」から「N(ニュートラル)」へ1段戻すだけでもいい。エンジン回転が一気に上がるが、今日のエンジンはそういう時にリミッター(回転上昇抑制)が働くので、エンジンが壊れる可能性は低い。もし壊れたとしても、止まることの方が優先なのだし。マニュアルトランスミッションなら、クラッチを踏み込めば済むことだが。
あるいは、ちょっと難しいけれど、イグニッションキーを「オフ」の位置まで回す。そのもう1段先まで回すとステアリングロックがかかってしまい、舵が動かなくなるので、かえって危険。
そんなところまで頭が回らなくなっていても、実はブレーキを力いっぱい踏めば速度は落ちる。ただ、エンジンがスロットルバルブ(吸入空気量調整弁)全開で力を出している状態では、ブレーキの倍力装置の効果が落ちる。特に踏み直したりすると、同じ力でペダルを踏んでもブレーキが効かない状態になる。しかし、それでもとにかく床も抜けよとばかりペダルを踏み込めばいいのだ。