2010年11月7日に中国漁船衝突事件が発生し、中国政府による尖閣諸島領有化が明らかになったが、日本政府は、毅然とした態度で中国政府に抗議をするどころか、中国政府の恫喝に屈するかのように、公務執行妨害容疑で逮捕した船長と漁船を即座に中国に返還した。
事件発生から1年経過し、その間日本政府が尖閣諸島の領有を確実にする具体的な措置を講じたか否かは寡聞にして知らない。
新聞報道によると、尖閣諸島周辺に出没する中国漁船は月に50隻を数え、事件発生後今年8月末までに330件近く退去勧告を行ったという。
尖閣諸島付近では多くの中国漁船のみならず中国の漁業監視船が毎月のように出没しており、8月24日には海上保安庁巡視船の制止を振り切って領海内に侵入し、電光掲示板で「尖閣諸島は中国固有の領土」と主張したという。
石垣市議会議員によると、日本政府は、尖閣諸島周辺で操業するよう宮古島や石垣島などの漁民に補助金を支給しているが、中国の漁業監視船に怯えて出漁する漁船はいないという。
中国が、南シナ海でベトナムやフィリピンの漁船を不当拿捕したことを聞けば、宮古や石垣の漁民が怯えるのも無理はない。また石垣市は、政府に対し台風などからの避難のために魚釣島に港の建設を求めているが、まだ肯定的な返事はないという。
領海外国船舶通航法改正案と無害通航
超党派の「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」は、新聞報道によると、領海警備を強化する「領海外国船舶通航法改正案」、国境に接する離島の国有化を容易にする「特定国境離島土地先買い特別措置法案」など3法案を今秋の臨時国会に議員立法として提出し、法案の年内成立を目指すという。
国連海洋法条約は、外国船舶は沿岸国の「平和、秩序及び安全を害しない限り」無害通航権を認め、12の有害通航の態様を具体的に規定している。
日本の領海外国船舶航行法改正案によると、外国船による領海内での「情報収集や宣伝」などを無害通航と認めず、取り締まりの対象としており、これに違反する外国船舶の領海外退去を規定している。
一般に、外国船舶の通航が無害であるか否かは、まず沿岸国が優先的に判断し、これに不服がある場合は国際裁判で審議されることになる。