12日のNY市場は、米株が堅調に推移し、ドル円やユーロ円が約1ヶ月ぶりの高値水準に上昇した。バローゾ欧州委員長が銀行の資本増強を義務付けると発言したことや、昨日は否決されたスロバキアのEFSF拡充案について同国の与野党が承認する方針で合意したことが欧州危機の解決に前進として市場のリスク選好ムードを高めた格好。遅くとも14日までには承認される見込み。米株が買われ、ダウ平均は年初からの下げを消す大幅高となった。

為替市場ではユーロが買われ、ユーロドルは1.38台乗せ、ユーロ円は一時107円台乗せと約1ヶ月ぶりの高値水準となった。また、リスク選好の局面に強い豪ドルが好パフォーマンスをみせた。豪ドル/ドルは1.01台後半、豪ドル円は78円台後半とそれぞれこの日の安値から300ポイント超の大幅高となった。また、このところ76円台でのこう着相場が続いていたドル円も上昇。77.50手前まで買われて、約1ヶ月ぶり高値水準となった。市場では、クロス円のショートカバーやドル買いポジションの巻き返しの動きも指摘されていた。米10年債入札は最高落札利回り2.271%、応札倍率2.86倍と前回より不調に終わり、株高も加わって利回りは上昇した。FOMC議事録の発表後もムードは変わらず、ダウ平均は200ドル高へと一段と買われる場面もあり、年初来の下げを一時帳消しにした。終盤にかけては、やや調整の動きもみられたが、ロンドン市場からの円安・ドル安水準は維持されている。

◆FOMC議事録、緩和策検討も意見が対立
9月20-21日に実施されたFOMCの議事録が公表された。このときはオペレーションツイストが発表されている。議事録では様々な金融緩和策が検討されたが、メンバー間の意見対立も露呈されている。具体的な方策としては、バランスシートの拡大、雇用市場の明確な目標の提示、超過準備金利引き下げが検討された。2人は、より強力な行動必要と判断。3人は、現時点で行動は適切ではないとの考え。オペレーションツイスト反対の1人、MBS再投資に利益なし、と主張していた。ただ、多くのメンバーは、大規模資産購入を選択肢に残すべき、としており、デフレとの条件付きで追加緩和第三弾(QE3)への道が開かれていた。景気認識については、米景気はショックに対してより脆弱化している、との点では意見が一致したが、雇用の弱さについては、多くのメンバーは需要の弱さが雇用市場の下押しの最大要因としながらも、数人のメンバーは、構造的なミスマッチが主因との認識の違いがあったようだ。いずれにしても、追加緩和策を先々のためにとっておきたいとの意図が見え隠れしており、金融政策による景気浮揚や雇用対策の効果には疑問が残る内容だった。議事録とは別に、フィッシャー・ダラス連銀総裁は、雇用創出のために中銀ができることは限られている、流動性のタンクはいっぱいで、溢れる寸前、と指摘している。さらに、ピアナルト・クリーブランド連銀総裁は、金融政策だけで経済的な問題を解決することはできない、超低金利下では追加緩和で景気刺激すること困難、と述べていた。

(Klugシニアアナリスト 松木秀明)