過去、当コラムで何度か指摘してきたが、総合スーパー(GMS)や百貨店など大手流通業の不振が続いている。
足元業績は低迷を続け、大手各社はリストラや出店抑制など守りの姿勢に終始している。ほんの数年前まで、旺盛な個人消費と歩調を合わせてきた業界の「イケイケ」の戦略はすっかり影を潜めた格好だ。
足元の状況を踏まえつつ、業界の先行きを専門家の意見を交えて占ってみよう。
大手流通の深刻な業績低迷
年初に発表された流通の2強の業績を見てみよう。
イオンの2009年3~11月期連結最終損益は、損失が99億円と2期連続の赤字を記録した。セブン&アイ・ホールディングスも大幅な減収減益となった。
流通の旗手ともてはやされた両社がこの状況である。月次売り上げデータが2年近く水面上に出ない百貨店は推して知るべしの状況にある。
ご案内の通り、一昨年秋の世界的な金融危機に端を発した消費不況が長期化し、イオンもセブンも主力のGMSが不振をかこったのが業績低迷の主因であることは明白だ。
一昨年秋からの消費不況に対応するため、両社は低価格商品のラインアップを拡充して集客に躍起となった。だが、逆に客単価が落ち込む皮肉な現象が顕在化する結果に。満を持して持ち出した戦略が業績回復に貢献するには至らなかった。
両社は大型店舗の出店凍結や、さらなるコスト削減で業績立て直しに躍起となっている。だが、「中長期的な人口減少と雇用環境の悪化傾向に歯止めがかからない中、抜本的な解決策にはほど遠い」(外資系運用会社アナリスト)と見る投資家が多い。業績好調時の株価を回復させるにはまだまだ時間がかかることは確実だ。
こうした環境下、機関投資家やアナリストの間では、「ハコモノの削減に本格的に取り組むべき」(外資系証券)との声が強まり始めているのだ。
全国にあふれている民間のハコモノとは
従来、「ハコモノ」とは、地方公共団体などが税金や補助金を大量投入して、「◯◯文化会館」「△◯振興センター」といった施設を造ることを言い表してきた。だが、最近は民間のハコモノが槍玉に挙がりだしたのだ。
民間のハコモノとはずばり、流通大手各社が手がけた巨大なショッピングセンターや内外の著名ブランドを集めた商業ビルを指している。