北朝鮮が2009年11月30日、突如として通貨ウォンのデノミネーション(呼称単位の変更)を断行した。旧100ウォンを新1ウォンとするもので、当初は交換額を1世帯当たり10万ウォン(日本円換算で3000円前後)に限定した上に、交換期間もわずか1週間とするなど乱暴なやり方だった。
実施後は「市場商人は商品を買い占め、日ごとに物価が暴騰」(韓国紙・朝鮮日報)といった混乱が続いているもようだ。北朝鮮の行動は国際社会の常識では理解できないことが多く、真意が読み解きづらい。とはいえ日本にとって無視できない国である以上、「訳が分からん」で済ませず、いささかなりと推察を試みたい。
すべては2012年に向かって
北朝鮮にとって、常に、物事を考える基準となるのは故・金日成主席が生まれた1912年だ。記念の節目が重なるよう、息子である金正日総書記の生年も1942年とされている(実は41年というのが定説)。
次の大きな節目は生誕100年を迎える2012年。北朝鮮当局は、同年に「強盛大国の大門を開く」と発破を掛けている。北朝鮮では現在、「すべては2012年に向かって進んでいる」と認識することが不可欠だろう。
その年に向けた最大の課題は、言うまでもなく金総書記の後継問題だ。2009年半ば以降、三男・金ジョンウン氏(日本への不法入国で拘束された金正男氏の異母弟。1983年生まれとされる)が後継者として有力との説を補強する情報が溢れている。北朝鮮情報を伝える韓国メディア「自由北朝鮮通信」によると、ジョンウン氏の誕生日前日の今月7日、地方や海外で祝賀会や会議が開催されたという。