1月6日、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(昨年12月15~16日開催分)が公表された。

 昨年12月4日に発表された米11月の雇用統計が改善方向でサプライズになった直後の会合であるため、FOMC参加者の経済見通しにどのような影響があったかが注目点の1つになった。しかし、議事録からは、影響はほとんどなく、総じて慎重な景気・物価見通しが維持されたことが確認された。FOMC参加者は、最近出てきた景気指標の改善は、昨年11月に提示したFOMCの経済見通しに概ね沿っているという認識。討議の参考として提出された米連邦準備理事会(FRB)スタッフの経済見通しでも、小幅上方修正は加えられたものの、大筋に変更はなく、かなり大幅な需給の緩み(スラック)の存在ゆえに、コアインフレは向こう2年にわたって、足元の水準よりもいくらか低くなると見込まれることが再度示されたという。

 今回の議事録からは、バーナンキFRB議長が昨年12月7日の講演で「恐るべき逆風(formidable headwinds)」と形容した、米国の本格的な景気回復を阻んでいる2つの主な要因、(1)タイトなクレジット状況と、(2)弱い雇用市場が、その約1週間後にFOMCで行われた議論でも引き続き重視されていたことが、はっきりと分かる。大恐慌時の経験などから時期尚早の引き締めは回避したいと考えている可能性が高いバーナンキ議長の姿勢に、FOMCの大勢がついてきているということであろう。

 (1)タイトなクレジット状況については、11月3~4日開催分のFOMC議事録に、資本市場の状況がかなり改善している一方で、銀行セクターでは信用状況がタイトなままという分裂状態(dichotomy)が見られており、大企業の場合に比べて中小企業が資金調達の面でかなり強い制約を受けているという問題意識が記されていた。そして今回の議事録には、「大企業と中小企業のファイナンスへのアクセスに明確な違いがあることに参加者は再度留意した」という記述がある。景気回復において通常は、雇用が伸びていく上で中小企業が大きな原動力になるのだが、銀行からの借り入れが制約されることによって中小企業による将来の設備投資や雇用が抑制されかねない、という危惧の念が、参加者から示された。

 (2)弱い雇用市場については、予想比上振れた11月分雇用統計を過度に重視しない姿勢が、FOMC参加者から示された。派遣社員の雇用増加はポジティブな兆候だと受け止めたものの、何人もの参加者が、労働市場の回復に関する確信に値するエビデンスとしては、1回よりも多くの良い統計報告が必要になるという見方に立った。「労働市場の弱さが会合参加者にとって、引き続き重要な懸念となった。彼らは総じてかなりの期間にわたって失業が高止まりすると予想している」という記述がある。