日本のロストジェネレーション世代よりも若干若い年代の中国人は、モノが充実していく一方で、政治改革や経済改革の狭間で育ち、政治経済政策の恩恵を受けることの少ない世代となってしまった。

経済成長が一変させた国民の生活

2人目産めないのは「一人っ子政策」のせいではない?中国

一人っ子政策は将来、子供たちが多くの老人の生活を支えなければならないという問題をはらんでいる〔AFPBB News

 あまつさえ社会主義から「新社会主義」という名の資本主義に変わり、競争社会化したことで人々の心も変化していった。

 この割を食った世代は、1978年の改革開放、翌79年の一人っ子政策開始の時にはまだ生まれていないか、ないしは物心がついていないかもしれないが、92年の南巡講話の時の記憶はあるに違いない。

 同じ国ながら、彼らの両親の常識とは違う空間に大人になって世間に放り出されてしまったわけだ。

役所などで働く公務員や「単位」と呼ばれる役所のような場所で準公務員として働く中国版ロスジェネの親、ないし友人の親は、高学歴とはとても言えぬ上司の下で働き、働いているとは言いながら毎日のんべんだらりと新聞を読みながら会社で過ごした。

 その恩恵として市価よりもずっと安価に家を購入し、老後の年金が保証された。裕福な環境ではないし、恋愛結婚は当時少なかったが、それでも少なくとも息苦しい生活ではなかった。モノは今のように何でもあるわけではないが、家や仕事で困ることはなかった。

 要は将来は安泰であった。そうした家庭を今の若者は見て育った。

 世代間格差に興味ある日本の若者の論調を見るに、団塊世代以上への恨み節をよく見かけるが、中国の若者に「正直、上の世代にネガティブな印象を受けるか」と聞いても、「そうは思わない」と一様に答える。