2008年の大納会(12月30日)に記録された国債各年限の利回り水準ボトムと、2009年12月中に記録された各年限のボトム(12月22日時点)を比較すると、以下のようになる。( )内は金利水準の変動幅である。

2年債:0.365% → 0.155%(▲0.210%)
5年債:0.670% → 0.425%(▲0.245%)
10年債:1.155% → 1.190%(+0.035%)
20年債:1.660% → 1.955%(+0.295%)

 日銀が、2月に企業金融支援特別オペを強化・延長、3月に長期国債買い入れを増額、12月に新型オペを導入してターム物金利低め誘導を打ち出すといった緩和方向の動きを見せたことから、2年債や5年債といった中期債の利回りは、顕著に低下した。

 一方、20年債の利回りは、大幅に上昇した。(1)日銀の金融緩和措置が及びにくいゾーンであるにもかかわらず、経済対策や税収下振れなどから発行額が着実に上積みされたこと、(2)鳩山内閣が予算編成を行う過程で財政規律に市場で疑問符が付けられたこと、(3)米国で国債イールドカーブのスティープ化が進行したこと、(4)主要な投資家である国内生命保険会社などが金利の絶対水準に注目した購入姿勢を維持したこと、などがその理由として挙げられる。長い目で見ると、超長期債には、財政面からのリスクプレミアムが上乗せされやすいと考えられる。

 そして、間にはさまれた10年債の利回りは、(1)名目GDPの閉塞状況とデフレの慢性化、(2)日銀の超低金利政策長期化見通しへの安心感、(3)中期ゾーンでは経費率をカバーし切れない投資家の購入ゾーン長期化の動きなどから、2008年末とほぼ同じ水準まで低下して、2009年最終盤の取引が行われることになった。

 2008年末に1.155%を記録した後の、2009年中の10年債利回りの推移を振り返っておくと、1-3月期は1.2~1.3%台を中心にもみ合い。4-6月期は金利上昇局面となり、6月11日に年間ピークである1.560%を記録した。しかしそこからは、ジグザグの動きとなりながらも、金利は断続的に低下余地を模索する展開。7月9日に1.270%まで低下 → 8月10日に1.460%まで上昇 → 10月6日に1.240%まで低下 → 11月10日に1.485%まで上昇 → 12月1日に1.190%まで低下、という経緯をたどることになった。筆者が2009年について想定した10年債利回りのコアレンジである1.0~1.5%の中に、ほぼ収まったと言うことができる。

 では、2010年1-3月期の債券相場は、どのような推移になるだろうか。具体的な予想レンジなどについては、年明けに別途お届けする予定だが、一言で言えば、12月の延長線上の動きになるだろう。

 長期金利の水準を考える上での基本要素である、(1)景気、(2)物価、(3)金融政策、(4)需給の4点について考えてみよう。

 これらのうち、(2)物価と(3)金融政策については、1-3月期も、債券相場に追い風を提供するだろうという見通しが動かない。物価情勢は、人口動態を背景とする構造的な面を多大に含んでいるデフレが続く公算が大きい。したがって、デフレ宣言を行った政府との共同歩調や「デフレファイター」ぶりをにわかに前面に出し始めた日銀は、超低金利政策を粘り強く継続する見通し。円高が急激に進行したり、景気・物価対応を追加的に迫られる場面では、12月から導入した3カ月物・0.1%固定金利の新型オペを増額したり、6カ月物や1年物へとタームを延長したりすることを通じて、「時間軸」的な緩和効果を強めようとしてくるだろう。