米中首脳会談、オバマ大統領「前向きで包括的な関係を」

首脳会談で人民元のドルペッグは話題にならず・・・〔AFPBB News

 11月中旬のオバマ米国大統領と胡錦濤中国国家主席との首脳会談では、市場関係者が注目していた人民元に対する言及はなかった。人民元は2008年夏以降、事実上ドルとペッグ(連動)している。このため、金融危機後の基軸通貨ドルに対する信認低下を映して、人民元も多くの通貨に対して下落している。

 「自国通貨安により中国製品が不当な輸出競争力を獲得している」――。オバマ政権や米国議会のみならず、欧州や日本からも人民元の切り上げを求める声は日増しに強まっている。しかし、事態はもはや人民元だけの問題ではない。金融危機後の非常事態に対応した各国の経済対策をいかに正常化させていくかという、広義の「出口戦略」が求められているのである。

強まるドルと人民元への包囲網

G20金融サミット、共同宣言を採択して閉幕

米ピッツバーグで開かれたG20金融サミットでは不均衡な経済成長の是正が課題に〔AFPBB News

 7月23日付の「東アジア経済圏の担い手となる中国」において、「世界経済の持続的回復に必要なもの」として、「米中2大経済圏の経常収支不均衡是正のため為替レート調整」を挙げ、「(中国にとって)そのカードをどのように切ることが自国経済の発展にとって最も効果的かがポイントとなる」と指摘した。

 9月のピッツバーグG20サミットでは「持続的な均衡のとれた成長」というスローガンが採用され、名指しこそされなかったものの、米中を中心とした不均衡の是正が国際的な政策協調のターゲットとして掲げられた。さらに、その後は、実体経済の不均衡のみならず資産価格の歪みを拡大させる「ドルキャリートレード」に警鐘を鳴らす論調が増えてきた。

ブラジル南部で集中豪雨による洪水や地滑り、84人が死亡

レアル高に苦しむブラジル〔AFPBB News

 ブラジルは10月に入って、海外からの証券投資への課税(金融取引税)の再導入を決めた。これは、金利差や株高を狙った資金流入でレアルが高騰したことへの対抗措置だ。ロシアやインドネシアも、短期資金の流入を制限する対策を検討している。11月下旬には、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が、「人民元は対ユーロで上昇を加速させるべき」との意見を表明した。

 米中以外の国にとっては、「ドル安=人民元安」であり、両通貨に対して改善を求める声が強まっている。米中問題だと思われていた人民元の為替レート調整の問題は、ドル安が進行したことで、「米中vsその他諸国」の問題へとスケールアップした。米国と中国のGDP(国内総生産)の合算値は、世界GDP3分1を占める。その2カ国が通貨安路線を突き進むことは、世界経済の均衡の取れた回復への脅威にならざるを得ない。