日中経済の相互依存関係は、予想以上に強固なものになりつつあるようだ。

 今年に入ってから日本企業の景況感は幾分改善されているが、それは主として鉄鋼や自動車部品など中国方面に向けた出荷が増えているからだと言われている。

 民主党政権は選挙公約の予算削減に奔走しているが、それによって日本の景気が上向くわけではない。当面は日本経済の中国頼みが続くものと予想される。

 現在の日本企業の対中ビジネスを見ると、国際貿易に加え、2万社以上の現地の日系企業(関連会社を含めれば4万社に上る)が主役になっている。だが、中国で設立された日系企業の一部は苦戦を強いられている。近年、中国市場の規模は拡大しているが、新規参入者が増え、競争も激化しているからだ。今、改めて対中投資戦略が問われている。

対中投資が苦戦しているのは情報発信力が弱いから

 中国に進出している外資系企業は数多くある。その中で、日系企業のパフォーマンスが必ずしも芳しくない。

 最も心配されるのは、中国人消費者の間で日本製品の認知度が低下していることである。例えば、薄型テレビなどの白物家電は、日本製が富裕層の間で依然として人気が高い。だが、全体的な売れ行きは芳しくない。なぜならば、韓国製と中国製に比べ、日本製の薄型テレビは割高のイメージがあるからだと言われている。

 しかし、本当の原因は、日系企業が製品の値段に値する「高品質」を中国で周知させることができていないことにある。

 携帯電話を見ても、ノキアやサムスンなどの外国メーカーと地場メーカーが圧倒的な優勢を保ち、日系メーカーのほとんどは撤退を余儀なくされている。ノキアやサムスンなどのミドルクラスの機種は日本円で3万~5万円の価格帯で売られている。この価格帯なら、日系企業は十分に戦っていけると思われていたが、完全に負けてしまった。

 唯一、上昇気流に乗っているのは自動車メーカーであるが、世界最強のトヨタ自動車が新規参入しているにもかかわらず、完勝には至っていない。品質管理と技術力などの面で比較すれば、韓国製自動車は日系メーカーの相手にならないはずだが、売れ行きは好調で健闘している。

 それでは日本企業は、どのようにすれば中国ビジネスを勝ち取ることができるのだろうか。

 それについて多面的な考察が必要だが、ここでは、日系企業の「情報発信力」の弱さに焦点を当ててみたい。