10月の債券相場は9日以降、予想外の大きな調整となり、10年物国債利回りは27日夕刻に1.405%まで上昇(8月13日以来の高水準)。5年物国債利回りは同日、0.695%まで上昇。2年物国債は26日に、0.285%まで売られる場面があった。
今般の長期金利急上昇の主因は、鳩山財政の行方を中心とする経済政策面での2つの「不透明感」が強く意識されるようになったため、国内投資家が債券買いを手控え、先物で思惑的なものも含めて売りが強まったことである。
国内債券市場の関心はいま、国債増発を含む鳩山由紀夫政権の財政運営に集まりがちである。税収の大幅下振れによって2009年度中の赤字国債大幅増発が避けられなくなった点については、何人かの閣僚・副大臣から、これは麻生太郎前政権の「負の遺産」だ、という位置付けがなされている。
だが、これは生産的な話ではない。債券市場からすれば、建設国債も赤字国債も同じ国債であり、その増発を回避する施策が何ら検討されないことには、釈然としない思いがある。補正予算の見直しで3兆円近い財源が出てきたのであれば、本来はまず、国債増発の回避に充てられるべきだろう。
さらに、2010年度予算の概算要求総額が95兆円を突破し、これに金額を明示しない事項要求が加わった。マニフェストで公約した政策に優先的に予算をつけた後で、既存の政策については優先順位をつけて採用していき、財源がなくなった段階でボーダーラインより下の政策はドライに削減していくというのが、政権発足前に民主党から出ていたメッセージから筆者を含む市場が描いていた、新しい予算編成の姿だった。
しかし実際には、各省大臣は「査定大臣」になることができず、要求総額が積み上がったわけである。予算編成の第1ステージは、明らかに失敗である。次は、行政刷新会議と財務省を舞台にした歳出切り込み作業という第2ステージなのだが、その成果は11月下旬にならないと見えてこない。
しかも、行政刷新会議は、新人議員の差し替え問題で、本格始動が遅れている。また、2010年度の国債発行計画が出てくるのは、例年通りなら12月20日前後である。したがって、財政政策にまつわる不透明感は、その払拭に時間がかかる。
政府はいわゆる「埋蔵金」のフル活用を行いつつ、2010年度国債発行額を2009年度補正後の44.1兆円以下に抑制することで、国債市場に対して、いわば「最低限の義務」は果たすのだろう。しかし、民主党が政権を主導すると見込まれる今後4年間の財政政策運営に対する信頼感は、それだけでは到底、確保できそうにない。
もう1つの不透明感の源は、日銀の金融政策である。
日銀が、CP・社債買い入れとともに、企業金融支援特別オペ(俗称「モンスターオペ」)も年末で打ち切るのではないかという観測(というより警戒感)が、白川方明総裁らの発言内容を根拠にして、市場で広がりつつある。