秋口になると、大手マスコミ各社の経済・産業担当記者は多忙を極めるのが通例だ。世界的に注目を集める国際見本市が相次いで開かれるためだ。

 1つは、最先端のIT技術と家電を披露するCEATEC(10月6~10日)、もう1つは隔年開催の東京モーターショー(10月23~11月4日)だ。

 だが、最近関係者からこんな話を聞いた。「今年は例年の盛り上がりがなく、地盤沈下の感が強い」(外資系証券アナリスト)というのだ。以前、日本株の相対的な地位低下に関するコラムを掲載したが、今回は日本の技術の集大成とも言える2大見本市の現状に触れる。

アナリストや投資家の関心は見本市よりサムスンの好決算

 筆者はフリーになってからも2大見本市に足を運んだ。筆者自身が電機製品とクルマを好み、強い関心を持っていることが最大の要因だ。各社の先端技術を体感できるほか、マニア垂涎のモデルに接することのできる得難い機会が、この2大見本市なのだ。

 加えて、旧知の業界担当アナリスト連と会場を回ることが多いため、役得として実地で新製品の数々の解説が聞けるのだ。趣味と実益、つまりコラムのネタが尽きないからに他ならない。

 しかし、今年はいずれの会場にも足を運んでいない。他の仕事が異様にたて込んでいたのは事実だが、「例年に比べ、(2つの見本市に)目玉がない」(外資系証券アナリスト)と事前に多くの関係者から聞かされたことが決め手になった。

 今年のCEATECでは、「環境対策を意識したソーラー技術、あるいはエコ家電のプレゼンに注力したメーカーが多かった」(同)という。また「家庭用3Dテレビなど目新しい技術が出品されていた」(外資系運用会社)。

 ただ、「エコ家電、3Dテレビにしても、普及はまだまだ先との印象が強く、各社の利益にどう貢献するかという観点から見ると現実離れした内容が多かった」(同)などと、辛口のコメントが多数筆者に寄せられた。

 昨秋以降の不況の影響で、CEATECへの出展社数は昨年の約800から今年は600弱に急減。会場全体の熱気に欠けたとの声も根強い。

 また、CEATECのオープニング間もない時に、韓国・サムスン電子の四半期業績が発表された。「市場予想を大幅に上回る好決算が会場で話題を集め、アナリストや機関投資家が一斉に自分の携帯情報端末、ブラックベリーに釘付けになる異様な場面もあった」(同)