脱原発が日本中で議論されているいま、現在建設中の原発を抱える本州最北端の町、大間でも、原発についての不安や議論しなければいけないことはあるはずだ。しかし、町の中で積極的に勉強会を開こうなどといった動きはないようだ。教育関係者のなかにもこの問題を提起しようという向きは感じられなかった。

大間町と函館市は17.5キロしか離れていない

集落と原発が重なり合って見える。フェリーから

 大間の町のなかにいる限り、原発は表立って話題に出ることはない。陸の孤島だからなのか、外部の情報に揺さぶられないという空気もあるのかもしれない。

 しかし、本州最北端であるということは、北海道との距離が近いということでもある。

 地図で見て気づいたが、津軽海峡を挟んでフェリーが行き着く対岸の函館市は目と鼻の先にある。その距離は最も近いところで17.5キロだ。

 この数字を福島で放射線が問題になっている距離と比べればよく分かるだろう。当然、函館では大間の原発に反対の動きが出る。

 すでに、昨年、函館の市民団体がJパワーと国に対して、大間原発の工事差し止めなどの訴えを函館地裁に起こした。また、福島の事故を受けて、市民による大間原発反対のデモがこれまで3度行われている。

函館市からもくっきり見える大間原発

大間を出て間もなくして函館山が近づく

 さらに、函館市議会や隣の七飯町議会では、大間原発建設の無期限凍結などを国に求める意見書案を全会一致で可決した。デモの規模は150人から300人と数だけ見ればそれほど大きくはないが、革新系団体だけでなく一般市民の参加も数多く見られた。

 函館市側からは望遠鏡で見ればくっきりと原発の建屋が見えるという、この距離感は、季節によっての風向きも考えれば、「原発に隣り合わせ」と言っていいだろう。

 それを実感するため大間からフェリーに乗ってみた。時刻表を見れば函館港まで1時間40分で到着する。幸い、乗船時は天気もよくカモメが付かず離れず飛び交い、爽やかな夏風を受けてうたた寝できるようなのどかな船旅を楽しむことができた。

 大間から近い青森県内の都市と言えば、車で約1時間ほどで人口約6万4000人を抱えるむつ市へ出ることができるが、大きな病院にかかる時などは大間の人たちは函館に出るという。