日本では原発事故を受けて電力に関心のある人が増え、電気自動車(EV)が一段と注目を集めているようだ。2011年7月末からは、実質負担額188万円の新型車も登場し、電気自動車が一般家庭に普及する兆しも見え始めた。

 欧州では電気自動車の普及が目指される一方で、より安価な「圧縮空気を動力とした自動車」の実用化が進められている。「エアポッド(AIRPod )」だ。しかし、開発は難航していて、量産開始の目途は常に引き延ばしの状態にある。

低公害の空気自動車は安全か?

MDIが開発した、圧縮空気自動車「AIRPod」の試作車。幅1.6メートル、長さ約2メートル、高さ約1.7メートルと小型(写真提供MDI)

 圧縮空気で走る自動車「エアポッド」は、ルクセンブルクのモーター開発メーカー、MDIが量産を目標にしている。空気で走るという奇抜さが、人々の関心を引いている。日本でも聞いたことがある読者はいるだろう。

 開発途上の「エアポッド」は3人乗り、最高時速80キロメートルの小型自動車だ。車体は軽くわずか275キロ。

 約250気圧260リットルの高圧空気タンクを搭載し、圧縮空気を膨張させてエンジンのピストンを動かすため、二酸化炭素(CO2)などの排ガスを一切出さない。また、タンクの耐久年は50年と維持費がお得だ。

「AIRPod」標準型は3人乗り。写真は前方の運転席。背中合わせで後部に2人が座れる(写真提供MDI)

 1回の給気で135~150キロ走行できるという。高速道路の走行には向かないが、買い物や短距離の通勤などには十分な走行距離だ。

 「エアポッド」標準型の予定価格は7000ユーロ(78万4000円。1ユーロ=112円換算)だ。(以上、「エアポッド」の最新データはこちら

 空気自動車は、搭載した高圧空気タンクがもし爆発すれば危ないと想像する人が多いはず。

 絶対に安全なのかは分からない。MDIの取材を重ねているベルギーのaircars.tkの説明では、タンクは通常のガスボンベに用いられているものと同様で、火事や衝撃などに耐える厳しい安全基準を満たしているため、爆発は起こり得ず、ひどい場合でも割れて空気が勢いよく噴き出すにとどまるという。