昨秋からの世界的な金融恐慌、そして未曾有の不況が続いてきたが、春先以降は鉱工業生産などマクロ経済指標が改善の兆しを見せている。これと並行して、膨大な在庫を整理した主要企業も徐々に増産へと動きだし、個別業績にも明るさがうかがえるようになった。

 であれば、業績底入れ感、あるいは先々の業績伸長を見込んで株価が上がるというのが経済のセオリーだ。ところが、現実は違う。主要株価指数は上値が重い状態が続き、市場のムードは停滞している。

 その理由は何か。キーワードは、「周回遅れ」だ。

産業界には底入れ感が広がるものの

 先月までに出揃った主要企業の今年第1四半期の個別業績を見てみよう。

 総合電機大手のパナソニックの営業損益は201億円の赤字となり、従来予想よりも大幅に赤字幅が縮小。同社は第2四半期の業績見通しの上方修正を行った。

 自動車を見るとホンダも期初の赤字予想が一転し、営業損益は251億円の黒字を記録した。このほかにも、電子部品などの分野で業績が大きく改善した企業が多く、投資家向け説明会の場などではIR担当者が声高に成果を強調した。

 一連の会社側のポジティブな発表を受け、主要業界をカバーするアナリストも一斉に動いた。機関投資家向けのリポートでは、赤字幅の大幅圧縮、または黒字展開を積極評価し、投資基準の目安となるレーティングを「売り」→「中立」、あるいは「売り」→「買い」に引き上げる動きが広がった。

 これに呼応する形で、主要紙やテレビ各局は日本経済の屋台骨である産業界に底入れ感が広がったと報じた。

 株式投資のノウハウ本によれば、こうした動きは明確な「買い」サインであるはずだ。日頃厳しい視線を企業に向けているアナリストが一斉に投資判断を引き上げたとなればなおのこと。個別株価の上昇に牽引され、日経平均株価が連日のように年初来高値を更新してもおかしくはない。

 だが、現実は違う。なぜこれだけ明確な買いサインが灯っているのに株価が上昇ピッチを速めないのか。そこには明確な理由がある。

アジアのライバルたちの業績は

 過日、海外大手機関投資家と接する機会があった。世界の主要市場の株式を日夜ウォッチし、莫大な金額を運用するファンドマネジャーだ。