坂井 筋トレはしていましたか?

平木 はい、一応。

坂井 本当ですか。やってませんよね。その体はやってないでしょう。

平木 やってましたって(笑)。ちゃんとトレーナーもいたんですよ。ただ、私がやってたのはウエートトレーニングではなくて、細い筋肉を強くすることだったんです。もともと筋肉が弱いので、細い筋肉を強くしてケガをなくすためのトレーニングをしていました。

みんな同じ打ち方にはならないはず

坂井 確かに平木さんはケガが少なかったですよね。

平木 私が最後までほとんどケガをしなかったのは、体の柔らかさもあると思うんですが、ジュニアの時から自分の筋力に一番合ったやり方で打っていたことが大きいと思います。体に無理のない、負担がかからない打ち方だったんですね。

坂井 自分の筋力に合ったフォームでやるというのは難しいことですよ。しかもそれが理にかなっているなんて。普通は、自分の体に合っているかどうかなんておかまいなく打ちまくるわけですよね。だから体のあちこちがめちゃくちゃになる選手が多い。

平木 それは、こういう打ち方じゃなきゃいけないって、形から先に入るから。

坂井 でも、テニスを始める時は、誰かに教えられたり、先輩のやり方を見よう見まねでやったりするじゃないですか。

平木 最初はグリップから始まって、腕の振り方や体の回し方など、いろいろ教えられますよね。その場合、人はみんな筋力が違っていて、筋肉の付き方や動き方も違うわけだから、みんな同じ動きにはならないはずなんです。それなのにみんな同じような打ち方にさせられるから、おかしくなるんです。

坂井 確かにその通りですね。それは誰の考えだったんですか。

平木 父親の考えによる部分が大きかったですね。子供の時は、ずっと父親がコーチのような存在だったんです。ただし、父親はテニスをしないので、メンタル面とか考え方などの面でのコーチですね。

メンタリティーに響く一言を送れるか

坂井 平木さんが今までずっと何をやってきたのかを細かく聞いていったら、世界に出ていくためにはいつ、何をしなきゃいけないのかが分かりますよね。

 日本のテニス界では、世界基準を知る人が世界トップから逆算して、「ジュニアのこのステージではこれをすべきだ」と教えることが、今こそ必要だと思います。世界基準を知らないで想像だけで教えていたりすると、型にはめたり、画一的な教え方になってしまったりするのではないでしょうか。

 さらに言うと、プロ転向後も、世界基準を知っていてネットワークのあるコーチがツアーについていくべきです。世界のトップ選手についているコーチは、世界中の情報収集力があって、いろいろな経験があります。日本にもそういう人が必要ですね。

 だから本当は、平木さんみたいな人がコーチをやると面白いと思います。もしも平木さんがコーチをするとしたら、どんな教え方をするんでしょうか。