九州電力によるいわゆる「やらせメール事件」は、まさにあんぐり開いたままの口がふさがらない事件だった。やらせる方もやらせる方だが、それを実行した方にも口がふさがらない。「日本人っぽい」と言われれば、妙に納得してしまう事件でもある。
6月26日にテレビ番組(ケーブルとインターネット)で国が主催して生放送された、九州電力玄海原子力発電所(佐賀県)の再稼働問題を県民に説明するための番組で、視聴者からの質問・意見を同時に受け付けたところ、玄海原発再稼働に賛成のメールが226件、反対が119件、その他128件あった。さらにファックスでは賛成60件、反対44件、その他は12件の意見が寄せられた(「読売新聞」7月10日付、電子版)。この結果をマスコミは大々的に報じ、現地では原発再稼働を望む声が強いことを印象づけた。
しかし7月2日になって、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が、26日のテレビ番組に視聴者から寄せられた原発再稼働賛成の多くが九電側の指示を受けた同社や同社関係会社社員のものだったことをスクープした。
この情報を某大手新聞社も入手していたが、九電側に確認したところ否定され、記事にするのを見送った、という。
ところが「しんぶん赤旗」のスクープをきっかけに7月6日、九電の眞部利應(まなべ・としお)社長が会見を開いて「やらせメール」の事実を認めた。先の某大手新聞社が「やらせメール事件」の報道を始めたのは、それからのことだった。
当初は課長級社員が「勝手にやったこと」とされていた
ともかく、九電側は「やらせメール」を指示したことを認めた。ただし、あまりにも日本的な対応となっていく。眞部社長の記者会見での発言を「日本経済新聞」(7月6日付、電子版)は次のように報じている。
「真部社長によると、『やらせメール』は九電の原子力発電本部の課長級社員が6月22日、本社の一部と玄海原発などの3事業所、子会社4社の担当者にメールで依頼した。具体的に『説明会の進行を見ながら、再開容認の立場で意見を発言してほしい』といった内容だった」
もちろんというか、自身の関与は最初に否定している。私は知らぬことで課長級社員が勝手にやったこと、というわけだ。