今回は夏のアルザス地方への旅のお話。

 アルザスはフランスの東の端に位置し、南北に流れるライン川を境に、ドイツと接している。2007年6月に開通した超特急TGVによって、この地方はより身近になった。アルザス地方の中心都市で、欧州議会の本会議場もあるストラルブールまでは、現在パリから2時間半。

時速320キロ、最新TGV路線の旅

フランス アルザス地方 セレスタ

 TGVの開通前は、4時間かかっていたことを考えると、これは画期的な飛躍である。日本の新幹線と高速鉄道の覇を競い合うTGVの路線の中でも、この線は最も新しく、最速の、時速320キロで走行しているという。

 さて、今回のメーンの目的地は、ストラスブールから南に45キロほど下った、セレスタという町。ここには、友人である佐藤夫妻が暮らしていて、ダリアの花で作った山車が街を練り歩くお祭りがあると聞いて、旅心をそそられ、彼らの誘いに甘えることにした。

 ストラスブールの駅でローカル線に乗り換えると、そこは既にフランスであってフランスではないような空気が漂っている。8月の週末、TGVからの乗り継ぎのいい列車ということもあって、車内はほぼ満席なのだが、パリなどで見かけるよりも体格の大きな若者たちがぞろぞろといて、ドイツ語を話している。

 回ってきた女性の車掌さんの胸元のバッジには、ユニオンジャックとドイツの国旗。つまり、フランス語のほかに、これらの言葉を話せますということ。もとより、車内アナウンスも3カ国語でなされ、車両が既にスイス国鉄のものだったりするのだから、パリとはまた違った国際性を感じずにはいられない。

 西側、つまりフランス側の車窓には、次第に緑のなだらかな傾斜地が広がってくる。それらはアルザスワインの葡萄畑だ。その中に点々と赤茶色の集落が見えるのだが、いずれも教会の尖塔をよりしろにして身を寄せ合うような格好で小さな村を形作っている。

一時はスウェーデンの支配下に置かれたことも

 20分ほどで到着したセレスタは、人口2万人ほどの町。日本の感覚からすると、さほどの大きさにも思えないが、アルザス地方では、なかなか大きな町といえる規模である。