てんでばらばらの自民党とちがって民主党の一部は親分持ちの組織化された子分集団であるから、党のマニフェストを見るときもそれより前に親分が何を言っているかきちんと押さえておかないといけない。
で、組合員数公称90万人の自治労は2007年5月の「見解」でいうところ、「日米地位協定の抜本的見直しを求め、在日米軍基地の国外撤去の実現に向け」活動するのだという。「米軍は日本から、出て行けえ」――昔のシュプレヒコールが、あたかもまだとどろいている。
もう一方の親分、日教組には文科省の推定で組合員が約29万人いる。こちらも2009年1月書記長談話などによると、シーレーンの入り口付近を跋扈する海賊退治に自衛隊のフネを使うことはまかりならず、在日米軍再編費用を日本が負担することもけしからんという“乗り”である。
民主党が考える安全保障って・・・
彼らの上部団体、連合の主張も、異とするには足りないが同工異曲。
関心の的はまずもって「日米地位協定」である。言い換えれば日本にいる米軍兵士の扱いが、「安全保障問題」と聞いて彼らが真っ先に思い出すテーマであるらしい。
米軍をいづらくさせたり、追っ払ったりすることが安全保障につながると考えているのだとしたら、そのロジックは全く見えない。なんにせよ、北東アジアの地域情勢だの、グローバルな問題にまつわる認識だのは、ひとつとして顔を覗かせない。
なんのための米軍か、民主党の支持母体をなすこれら組合の公式声明や発表文からは議論の形跡が窺われない。米軍が在日するそれ自体が由来唾棄すべきことなのであるから、議論の必要はない? それとも誰か、政治家が後始末をよろしくしてくれるとでも考えている?
「党内無党派層」を味方につければOK?
実際そんな実態を示唆する民主党関係者もいる。
いわく「右バネ」のきく現実派――日米安保は必要のみならず強化すべきと考える――が党所属国会議員の2割を占め、その逆に、組合組織票に生殺与奪を委ねた「左バネ」のきく勢力が、やはり約2割・・・。
残りの6割は「民主党内無党派層」と呼ぶべき人々で、これは争点ごとにあちこち振れる。政権をとれば、彼ら6割を説得してリアリストの向きへ同調させればいい。だから外交にしろ安保にしろ、大きな変化は起きない、心配しないでくれという言い分である。
ハイそうですかと全幅の信頼を置くべく、民主党には実績がない。
だいたい、直近の民主党マニフェスト(PDF)で「外交・防衛」政策を見るといい。イの一番に出てくるのはやはり、「国民不在の在日米軍再編」なる一項である。
「米国の言いなりに資金を提供することにならないよう」徹底的にやるウンヌンと書いてあって、よもやこれが選挙芝居用演技のセリフだとは主張できまい。
8月30日の選挙で上がってくる民主党代議士たちが、党論のバランスを左右どっちに振れさせるかも想像できない。要するに、わが国安全保障政策の先行きは当分視界不良のままになる。
そして先行き不透明感とは金融市場においてと同様、国際関係においても絶対に避けなくてはならないリスク要因だ。