衆院選、自民大敗の予想 世論調査

勝算なき「破れかぶれ」解散〔AFPBB News

2009年7月21日、麻生太郎首相は衆院解散を断行した。内閣支持率が20%を切る危機的水準まで低下し、東京都議選をはじめ地方選挙で自民党は連敗中。首相は党内で公然化した「麻生降ろし」を封じ込め、破れかぶれで選挙戦に突入したが、勝算があるようには見えない。

 経営破綻した企業に共通するように、危機に陥ってもリーダーが居座り続ければ、組織は合理性を欠いて暴走する。最後には手の打ちようがなくなり、破局を迎えてしまう。自民党は8月30日投開票の衆院選で敗北を喫すれば、民主党に政権の座を明け渡すばかりか、存亡の危機に直面する。果たして、「終わりの始まり」を迎えるのだろうか。

GM、新たなリストラ策発表 今期業績は巨額損失の恐れ

GMに君臨したワゴナー
前会長
AFPBB News

 世界最大の自動車メーカー、米ゼネラル・モーターズ(GM)では、2000年にリック・ワゴナー氏が社長兼最高経営責任者(CEO)に就任、2003年には会長兼CEOとして巨大組織の全権を掌握した。同氏出身の財務部門が権勢を振るい、モノづくりより金融事業に傾斜すると、GMは「クルマもつくれる銀行」と揶揄されるようになる。(2009年6月3日・漂流経済「GM帝国崩壊、デトロイトの終焉」)

 一方、市場は「ワゴナー体制ではGMは再生できない」と不信任を突き付け、何度も辞任説を流した。しかし、ワゴナー氏が牛耳る取締役会はトップを更迭できない。同氏が抜擢したGM幹部は「再生を進めるのに疑いなく適任の人物」と、オウムのようにボス礼賛を繰り返した。

 最終的にオバマ政権から引導を渡される形で、ワゴナー氏が辞任したのは2009年3月末のこと。しかしGMの命脈は既に尽きており、それからわずか2カ月余で同社は連邦破産法11条の適用申請に追い込まれた。

 株主、従業員・労働組合、商品の顧客、資材取引先、取引銀行・・・。巨大企業はステークホルダー(利害関係者)を多数抱えている。GMの業績不振に業を煮やし、株主は株を売り、労組はストを打ち、格付け会社はGMの格付けを引き下げた。それでも経営刷新は至難の業であり、ワゴナー体制は9年近くに及んだ。

党執行部と国民の間で板挟み、自民候補者のジレンマ

 政党のガバナンス(統治)に対する牽制機能は、企業に比べてさらに曖昧だ。自民党の場合、細田博之幹事長以下の現執行部には麻生総裁(首相)に抜擢された人事の恩義があり、最後までボスに忠誠を尽くすはず。この点では、GMのワゴナーCEOと経営陣の関係と違いはない。

 GMがクルマを売るのに対し、自民党の「商品」は議員とそれが立法化する政策だ。「商品」になる前の衆院選候補者を自民党公認候補とするかどうかは、党の執行部が決定権を持つ。公認から外されれば当然、候補者は党から選挙資金をもらえず、連立与党の公明党による選挙支援も失う。

 候補者にとって、選挙資金は死活問題だ。かつての自民党では各派閥の領袖が子分にカネを配っていたが、今や政党交付金すなわち税金への依存度が大きい。2007年の場合、自民党本部の総収入約320億円のうち、交付金が3分の2近くを占めている。交付金は執行部が差配するから、幹事長らの権限は昔より強大だとも言えよう。