「マッチ・ドットコムは、アメリカで生まれたインターネットによるマッチングサービスです。現在24カ国でサービスを提供し、8つの言語で使われています」遠藤久未(31歳)が歯切れよく説明する。

 彼女はマッチ・ドットコム ジャパンのPR担当だ。黒のワンピースにベージュのカーディガンをはおり、首から社員証をかけている。女優の竹内結子に似た美人だ。

今年はついに会員が100万人を突破

遠藤久未さん/前田せいめい撮影遠藤久未(えんどう・くみ)さん。ビルを一歩出ると自然教育園の緑があふれる(撮影:前田せいめい)

 白金台のプラチナ通りという名の並木道に面してガラス張りの半円形のビルがある。その7階にマッチ・ドットコム ジャパンはある。部屋からは国立自然教育園のうっそうとした森が見える。

 「日本語サイトは2002年にスタートしました」遠藤はニュースリリース用のA4版の紙を次々に私に渡す。「その時の会員数は6万人でした。それが去年、2008年に90万人になり、今年100万人になりました」

 マッチ・ドットコムの会員になると、自分のプロフィールが公開でき、他の会員のプロフィールを見ることができる。自分のつき合いたい相手についての条件を入れて検索すると、何人かに絞られる。その中に気に入った人がいたら、マッチ・ドットコム経由でメールを送ることができるのだ。

 会員数の伸びは「婚活」ブームによるものではないだろうか、そう私が聞くと、むしろ私たちがブームを起こす努力をした方なのだと遠藤は言った。

 「婚活」ブームは、山田昌弘と白河桃子の共著『「婚活」時代』から始まった。彼らは、結婚も、就職活動と同じように活動しないと、できない時代になったのだと主張し、結婚活動を「婚活」と名づけた。この本が売れ始めた時、「ブロードキャスター」というTV番組に企画を持ち込んだ。TV局は乗り気になった。ただ番組にするには、実際に婚活をしている人を取材しなければならないという。遠藤は婚活中の人なら紹介できると言った。

 マッチ・ドットコムに商品はない。あるのはサービスだ。そのサービスを知ってもらうにはサービスを利用している人を見てもらうしかないと考えた。特にその頃は、怪しげな出会い系サイトとは違うことを伝えなければならなかった。真面目な人たちが利用しているところを見てもらいたかった。

 TV局側とマッチ・ドットコム側の要望が合致した。番組が作られ、放送された。TV放送の翌日、会員数がどっと増えた。

 その後、取材の申し込みが殺到した。TV、新聞、雑誌で「婚活」が取り上げられた。そしてそのどこかにマッチ・ドットコムの名前が出るようになった。