ロシアのサンクトペテルブルクで開催された第15回国際経済フォーラム(6月16~18日)は、そこで行われるドミトリー・メドベージェフ大統領の演説にメディアの関心が例年以上に集まったようだ。(文中敬称略)

来年の大統領選、メドベージェフはやや苦戦か

 来年2月の大統領選への出馬をメドベージェフがその演説の中で明らかにするかどうか、への注目が理由である。そして、結果はこれまでの繰り返しで明確なことは述べられず、毎度のことながら、またメディアは期待を裏切られた。

 それでも、精緻を極めた大統領演説の解析が執念に燃える報道各社で行われ、ああだこうだが続く。ロシア政権内でも、メドベージェフかウラジーミル・プーチンかの議論は関係者の内部で広まっている。

 ある観察者によれば、これまでメドベージェフに近いと言われてきた人の口からも、「彼ではもう駄目だ」という台詞が出始めているという。どうも世論調査の結果とは裏腹に、現職への評価は周りでもあまり芳しくない。

 従って、来年の国際経済フォーラムで誰が演説するのかは分からないが、今年のフォーラムでは、グローバル経済成長、ロシアでの創造的資本育成、そして技術革新・移転の3つの問題点が取り上げられ、主賓には中国の胡錦濤国家主席が招かれた。

 世界経済とロシア国内経済の2つを論じる形は従来通りだが、過去のメドベージェフ大統領のこのフォーラムでの演説を振り返ると、その時々のロシアの立ち位置が浮かび上がってくる。

2010年、対米批判から踵を返したロシア

 2008年は意気軒昂なロシア経済を背景に、国際金融市場でやりたい放題の米英資本を糾弾し、次の2009年は、リーマン・ショックでロシア経済を墜落させたことへの恨み節で、やはり国際金融資本批判とそれへの規制導入や国際金融機関の改革が唱えられた。

 米英への対抗勢力としてのBRICs、それを率いるのはロシアを措いて他に誰がいるのか、と言わんばかりである。

 しかし、2010年になると、対米批判は大統領の口から姿を消す。ロシアがハイテク国家を目指すことを宣言し、その近代化政策に米国の協力が必要となったことが理由だろう。

 リセット効果の浸透もあったかもしれない。そして、代わりに国内経済の諸問題解決が強調された。とはいえ、国際経済については、BRICsやG20との連帯強化の意図も隠しはしない。