自民党が宮崎県の東国原英夫知事に次期衆院選出馬を要請したところ、東国原から「党総裁のイス」を条件に突き付けられた。どこまで本気で言っているのか分からず、「東国原一流のジョーク」と笑う向きもある。しかし、公の場で自民党がここまでコケにされたのは前代未聞のこと。随分、総裁ポストも軽く見られたものだ。党の行く末を暗示するかのような出来事だった。(敬称略)

 6月23日は沖縄戦の「慰霊の日」。だが、自民党選対委員長・古賀誠は沖縄全戦没者追悼式への出席をキャンセルし、宮崎県庁を訪れた。日本遺族会会長の古賀は、毎年の恒例行事よりも東国原知事に会うことを優先したのだ。

 会談の冒頭、古賀はテレビカメラを前にそのことを知事に明らかにした上で、「真剣勝負をさせていただきに来た」。会談が始まると、並々ならぬ決意で「自民党に新しいエネルギーが欲しい」と比例代表選への出馬を求めた。

「総裁」のイスをくれるなら・・・

 これに対し、東国原が出した2つの「条件」は耳を疑うものであった。「全国知事会がまとめた地方分権案を一言一句漏らさずに自民党のマニフェスト(政権公約)に盛り込み、4年間で実現すること」「わたしを次期総裁候補として次期衆院選を戦うこと」

 何と、東国原は自民党実力者の古賀に「総裁のイス」を公然と求めたのである。そして、記者団には「党の内部を変えるのではなくて外部から新しい風を入れて、血液を入れ替える覚悟が必要だ。そういう覚悟を国民に示すべき時期じゃないか」と力説した。東国原の予想外の発言を聞き、古賀は「あ然」としたに違いない。

政治部デスク騒然、スポーツ紙は1面トップに

 このニュースが飛び込んでくると、政治部デスクは騒然となった。「東国原が自分を自民党総裁にしろって? 冗談だろ?」「この記事の扱いどうする?」

 このニュースをどこまでまともに取り上げるべきか。東国原が提示した条件は、政界や自民党の常識ではまずあり得ない話。ひょっとしたら、「お笑い」かもしれない。しかし、東国原の表情は大真面目だし、民放テレビが早速大騒ぎを始めた。

 「恐らく、スポーツ紙は1面トップだろう。ワイドショーも騒ぐだろうな」と直感した。案の定、幾つかのスポーツ紙が24日付朝刊で1面に持ってきた。

 東国原に対し、自民党幹部は不快感をむき出しにした。総務会長・笹川堯は「あほらしい」と顔をゆがめ、国対委員長・大島理森は「総裁になりたいのであれば、党の議員としてまず活躍してから発言すべきだ」