北京のエリート小学生の5人に1人は精神障害を患っている!?
某国情報機関の極秘リポートではない。情報管理の厳しい中国でも、公開情報を丹念に拾っていくと、時折こんなショッキングな記事に出くわすことがある。今回は、このニュースをヒントに、「中国株式会社」の偽装隠蔽体質の背景を考えてみたい。
急増するエリート小学生の精神疾患
本年(2009年)1月、中国の有力週刊誌「瞭望」は中国青少年のうつ病、行動障害、自閉症といった「心の病」について大きく報じている。
記事によれば、昨年10月北京市衛生局は、1984年に8.3%だった北京児童の精神疾患発症率が1993年に12.9%となり、さらに2002年には北京市内・中関村地区の重点小学校群で18.2%になったと発表したそうだ。
恐らく現在の発症率はもっと高いに違いない。同じ記事の中で、ある中国の若年精神疾患専門家は、中国児童・青少年の精神疾患発症率が既に国際平均である15~20%を超えたと述べているほどだ。
この点につき「瞭望」は、家庭問題だけでなく、現代中国社会の様々な経済的、地域的、心理的不均衡から生ずる個人生活上のストレス、不公平感も遠因ではないかと分析している。なるほど、経済発展の負の側面ということなのか。
確かに、この種の「心の病」は世界共通であり、日本の青少年にもよく見られる。しかし、別の日中共同比較研究によれば、19歳以下の若者の神経症性障害発症率は中国の方が高く、特に男性では日本の8.9%に対し、中国は17.5%と2倍近い数値を示している。
筆者は医者ではなく、専門的なことはよく分からない。しかし、こうした数字を見る限り、中国青少年の「心の病」は国際的にも突出しているように思える。
「瞭望」が報じた小学校がある中関村といえば北京大学、清華大学に近く、多くのITベンチャー企業が集まる「中国のシリコンバレー」地区だ。また、重点小学校とは、特に優秀な生徒が集まるエリート進学校である。もし、この優等生たちの5人に1人が精神障害を患っているとすれば、やはり尋常ではなかろう。
現代中国は激烈なる競争社会である。すべての中国人が、文字通りあらゆる手段を用いて、富と名声を目指す「チャイニーズドリーム」を実現しようするからだ。こうした過当競争がもたらすストレスは、早くも小学校入学時から子供たちを苦しめているのだろうか。
中国人の心の平安
大人たちのストレスは子供たち以上に厳しいはずだ。共産党員ならいざ知らず、富も権力もない庶民にとって、この熾烈な競争を生き延びることは容易ではない。あらゆる不正・腐敗が横行する中、有力政治指導者ですら、逃げ遅れた者から脱落していくのが今の中国の現実である。
今はどうか知らないが、2000年北京の日本大使館に赴任した当時、中国では「手に入らない公文書はない」と教わったものだ。日本の就学ビザを発給する大使館領事部の重要な仕事は、偽の在学証明書や卒業証明書を見破ることだった。北京大学など有名校ほど偽造文書の値段は高いらしい。カネさえ出せば、本物の用紙とスタンプ付きの代物まで手に入るのだそうだ。
このような最低限のモラルすら喪失した弱肉強食の金儲け主義世界で、中国の名もない良民たちはいかにして心の安寧を得ているのだろう。これこそ、2000年から足掛け4年北京に住んだ筆者が最も知りたかったことの1つである。