留学生のブランド大学を目指せ!

 もちろん、全国区では無名のローカル大学がいきなり東京に進出したところで、厳しい競争環境の中で勝算はない。そこで、目をつけたのが留学生だ。

渋谷キャンパスのエントランス

 独立行政法人日本学生支援機構のまとめによると、2009年5月1日時点で、日本国内の大学などに通う留学生は前年同期比7.2%増の13万2720人と過去最高を記録した。

 大学経営にとって、少子化という逆風は、当面、止みそうにない。そんな中で、留学生は唯一とも言っていい成長が期待できるマーケットだ。しかも、政府は2008年7月に「留学生30万人計画」を打ち出し、2020年頃をめどに、受け入れを30万人まで拡大する目標を掲げている。日本経済大学は、東京進出と同時に、今後一段と増加が期待される留学生の獲得合戦にいち早く、名乗りを上げたことになる。

 長い歴史を持つ全国区のブランド大学がひしめく東京で、後発参入組が日本人学生に対する知名度を上げていくには、恐ろしく長い時間がかかるだろう。しかし、ほとんどの大学が同じスタートラインにつく留学生市場においては、先手必勝で勝機を見いだせるかもしれない。

日本経済大学 吉田二郎教授。渋谷キャンパスの国際交流センター長を務める(撮影・前田せいめい)

 渋谷キャンパスの国際交流センター長を務める吉田二郎教授は、三菱商事を退職後、2009年度から同大学で教鞭を執る。繊維畑一筋に歩いた商社マン時代、営業部長や海外の現地法人トップとして、仕入れ先である中国とは切っても切れない深い関わりを持ってきた。だからこそ、日本企業が海外展開していく上で、日本から派遣される現地法人の社長と、現場の労働者の間を取り持つことができるミドルマネジャーの存在の大きさは身をもって知っている。

 かつての中国は、安価な労働力を提供する生産拠点であり、多くの製造業が進出済みだ。しかし、今の中国は、巨大な人口を抱える大消費地として、世界中からの注目を集める。日本からも、コンビニや薬局チェーンなどの小売店、物流などサービス業が本格的に成長マーケットである中国を目指しており、現地ミドルマネジャー需要が一段と高まるのは確実。

 日本経済大学が目指すのは、まさに、そうした、ミドルマネジャー層の養成だ。

 企業の立場からすれば、現地のミドルマネジャーが日本語を話せることは大前提。その上で、日本的経営の在り方、日本人の思考様式を理解した上で、正しく、現地の労働者に会社の方針、考え方を伝えることができる人物が必要なのだ。

 留学生の側も、7割程度が「日本で働きたい」「日本企業の中国現地法人で働きたい」と考えていることから、企業・留学生のニーズは合致している。