新緑が目にまぶしい季節となりました。私にとって、この時期は、企業の新人幹部向けのメディアトレーニングが多くなる季節でもあります。
バーソン・マーステラが実施する経営陣向けの広報研修プログラムでは、企業の代弁者である経営陣の発言と振る舞いがどれほど企業に影響を及ぼすかという議論が特に多くなされます。
つい先日行った研修でのことです。新米の営業本部長さんが、突然熱く問いかけてきました。「福永さん、企業の広報活動に一番必要とされる要素とは何ですか」
唐突な質問に、「持続です」という答えが口をついて出ていました。後になって考えてみたのですが、我ながら的を射た答えだったと思い、ほっとしました。
広報は派手な仕事だとよく勘違いされます。でも、実はとても地味な作業の積み重ねなのです。その作業の中で、ひときわ丁重にケアをし続けなければならないのが、「企業アイコン」とも言える無形資産の管理と育成です。
企業アイコンとは、企業のDNAと価値観を具現化し、象徴したものと言うことができます。そこに秘められた考えは、世代を超えて引き継がれるべきものです。
世の中で企業アイコンが前向きに語られることが多ければ多いほど、価値の高い企業資産と見なされるわけです。
川底から24年ぶりに救出
最も重要な企業アイコンの1つが、「創業者」の存在です。
お気づきになったことはありますか。多くの名だたる企業には、個性を放つ創業者がいます。その創業者の行動や考えは企業の中で「物語」として語られ、その物語が歴史を通して「神話化」されていきます。企業内だけでなく、企業と社会の接点で、様々な形でその話が語られていくのです。
その人物を取り巻く神話が、企業に対する尊敬や親しみなどの感情を大衆から引き出す大きな力になる場合があります。
「カーネルおじさん、24年ぶりの救出」。3月10日の出来事でした。
24年前の1985年、阪神タイガースのリーグ優勝を祝う人々にお店の前から担ぎ出され、胴上げされた「カーネル・サンダース」像。リーグ優勝の立役者であり、当時大人気だったランディ・バース選手に似ていると一部のファンの目に留まり、「六甲おろし」の大合唱をバックに道頓堀川に「飛び込む」羽目になってしまったのです。