いかに感情を切り離して練習するか
そしてグランプリファイナルから2週間もない全日本選手権では見事に立て直して3位、オリンピックへの切符をつかみとった。
「自分の中では、グランプリ2戦とも優勝してグランプリファイナルに進んだので、グランプリファイナルでもしっかり自分の力を出し切って少しでも上の順位で終わりたかったという思いでした。でも今まで感じたことがないような緊張の中でまだまだ踏ん張りきれなかった。自分はほんとうにまだまだ強くならないといけないなと捉えて、全日本選手権で自分の全力を出し切る以外に自分がオリンピックに行ける道はなかったので、とにかく一生懸命打ち込むことでしっかり立て直せたのかなと思います」
とことん追い込まれたような心境にもなる中、そこから全日本選手権までは「立ち直るというよりかは、次に向けて学びを得るっていうような期間」だったと言う。
「緊張した中でどう自分のマインドセットをしていったらいいのかを考えました」
「練習内容をどうするというよりも、いかに感情を切り離して練習するか、体にとにかくいい感覚だけを覚えさせるか、みたいなところに意識を置いていました」
それらにうかがえるのは、自分を真摯にみつめ、自分と向き合い、そして乗り越えようとする姿勢だ。それを誠実に実行したことが全日本選手権での巻き返しにつながっている。
グランプリファイナルから全日本選手権の期間に限らない。今ある自分とありたい自分との距離をみつめ、自分はどうありたいのかを考え、自らの意思をもってスケートに打ち込んできた。仙台から京都への移籍の決断もその一環としてある。
そうして歩んだ過程の末に、現実にすることができたオリンピック出場がある。
でもそこに満足はしていない。
「ほんとうにオリンピックに出るという一つの目標はかなえたんですけど、それは目標のうちの半分に過ぎません。オリンピックでしっかり会心の演技をショートプログラム、フリーとそろえる、それを達成して初めて、私のオリンピックに対しての目標が完全に達成したと言えるので、今まででいちばんいいと思えるような演技を目指して頑張っていきたいです」
振り回されることなく、自分を貫けばきっと、それはかなう。
千葉百音は、初の大舞台で輝く日を目指し、その日まで全力を尽くす。

プロフィール ちばもね 2005年5月1日、宮城県生まれ。所属:木下グループ。2023-2024シーズンからシニアに移行、全日本選手権2位、四大陸選手権優勝、世界選手権7位。2024-2025シーズンはグランプリファイナルに初めて進出し2位、世界選手権でも3位と表彰台に上がる。今シーズンはグランプリシリーズ2戦2勝、ポイントトップでグランプリファイナルに進出、全日本選手権では3位となりミラノ・コルティナオリンピック代表に選出。
*JBpressでの連載「フィギュアスケートを支える人々」(2024年8月30日公開までの一部)と書き下ろしを含む電子書籍『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』(松原孝臣著/日本ビジネスプレス刊)が発売中です。
『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』著者:松原孝臣
出版社:日本ビジネスプレス(SYNCHRONOUS BOOKS)
定価:1650円(税込)
発売日:2026年1月20日
冬季オリンピックが開催されるたびに、日本でも花形競技の一つとして存在感を高めてきたフィギュアスケート。日本人が世界のトップで戦うのが当たり前になっている現在、そこに至るまでには、長い年月にわたる、多くの人々の努力があった——。
日本人がフィギュアスケート競技で初めて出場した1932年レークプラシッド大会から2022年北京大会までを振り返るとともに、選手たちを支えたプロフェッショナルへの取材を掲載。
プロフェッショナルだからこそ知るスケーターのエピソード満載。さらに、高橋大輔さんの出場した3度のオリンピックについての特別インタビューも掲載されます。
フィギュアスケートファンはもちろん、興味を持ち始めた方も楽しめる1冊です。
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