トランプ大統領の領有発言に抗議する人々(写真:ロイター/アフロ)
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(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

 デンマーク領グリーンランドの取得に野心を燃やす米国のドナルド・トランプ大統領は、1月17日、自身が運営するSNSであるトゥルース・ソーシャルへの投稿で、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国の8カ国に対して、2月1日より10%の追加輸入関税を課すと一方的に通告した。

 トランプ大統領は、グリーンランドが中国とロシアからの脅威に晒されており、米国が防衛する必要があると頑なに主張。対するデンマークと欧州諸国は、グリーンランドの防衛は自分たちが責任を持っているとアピールするため、1月15日、グリーンランドに少数の軍事要員を派遣した。トランプ大統領は、このことに不満を持ったようだ。

 この追加関税は6月1日には25%に引き上げられ、米国がグリーンランドを購入するまで継続されるようだ。いわゆる“トランプ関税”の枠組みで、英国の輸出品には10%の追加関税が、また欧州連合(EU)に加盟している諸国とノルウェーの輸出品には15%の追加関税が課されているが、さらに最大で25%の関税が上乗せされるという。

 ここで各国の対米輸出依存度(輸出総額に占める米国向け輸出の割合)を確認すると、英国が16%程度と最も高く、次いでフィンランドとドイツが10%程度、フランスが8%程度、デンマーク、オランダ、ノルウェーと続くことになる。対米関税交渉を最も早く、かつ低率で乗り切った英国にとっては、その果実がほとんど失われることになる。

各国の対米輸出依存度(注)2025年は1-9月期の累計値。(出所)国際通貨基金(IMF)

 新年早々、外交政策の武器に関税政策を用いるトランプ主義の第二幕が始まったわけだ。昨年来、まさに“政冷経熱”の色彩を強めていた欧米関係だが、今回のグリーンランドを巡る騒動で欧米関係が一段と悪化し、急速に“政冷経冷”へと向かう展開が意識される。この問題で欧州諸国が妥協に応じるとは考えにくいためだ。