MAGAが恐れる「文明の消滅」とは何か
ここで思い当たるのが、「文明の消滅」が迫っているという恐怖だ。
この恐怖の根っこには、左派のそれよりもさらに過激なアイデンティティー政治がある。
問題になるアイデンティティーは国籍、人種、男性中心主義だ。このアイデンティティー政治は大勢のMAGA派が抱く「グレート・リプレイスメント(大いなる置き換え)」に対する恐怖とリンクしている。
つまり、ここで言う「消滅」とは、「白人」が減り「キリスト教徒」が減り、多数派がそれほど多数ではなくなることだ。
米副大統領のJ・D・バンスは妻がインド人だが、このビジョンの知識人向けバージョンを共有しているように見える。また嘆かわしいことに、米共和党の未来もここにあるのかもしれない。
もしそうだとしたら、NSSが論じていることは、トランプ政権自体を駆り立てているもの――人口動態や文化における米国の変わり方への激しい嫌悪――を欧州に投影したものだ。
国家は自国の国境を管理しなければならないとの主張には筆者も賛成だ。移民が流入する国家の価値観は普遍的かもしれないが、そうした国々の市民権は世界中の誰にでも開かれたものにはなり得ない。
民主主義国は道しるべ
しかし、リベラルな民主主義国は道しるべになることはできる。偉大な文明とは、痛みを伴いながら何世紀もかけて(そして、多くは偽善的に)その姿を現す。
そしてその土台は個人の自由、市民の平等な権利、法の支配、知識の探求、公正に選ばれた政府といった理想から成っている。
これらの理想は人種にも宗教にも根ざしていない。だが、リベラルな民主主義国の市民は全員、これらの価値観を受け入れなければならない。
要するに、この政権は建国250周年の今年、あの共和国自体を消滅させたいと思っている。だからこそ欧州を敵と見なしている。
そして、そうだからこそ欧州は自己を守らねばならないのだ。
(文中敬称略)