ヒトラーの台頭を許した欧州の歴史
欧州では何もかもうまくいっていると言っているわけではない。大きな懸念も数多く存在する。
ナイジェル・ファラージのように北朝鮮になぞらえるのは常軌を逸しているとはいえ、英国でさえ言論の自由には心配な面がある
しかし、あのような「愛国的な」政党に対する心配は理にかなってもいる。何と言っても、欧州には歴史がある。
その歴史はまざまざと、「愛国的な」政党、もっと広い意味で言えば国家主義がいとも簡単に破滅への道に通じることを教えている。
2度の世界大戦が我々にそれを教えてくれた。
言論の自由に関するアドルフ・ヒトラーの「権利」を抑制しなかったために、ドイツは550万人の兵士と110万~300万の文民を第2次世界大戦で失うことになった。
世界全体で見れば、2度の大戦で7500万人もの命が失われた。
ヒトラーもまた、NSSが言う「文明の消滅」を恐れた「愛国者」の一人だった。
ドイツでは2025年5月、政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」が連邦憲法擁護庁から「右翼過激派団体」に認定された。同党がナチ党でないことは間違いない。だが、その内部にはネオナチがいる。
自国の歴史を承知しているドイツ人がただ笑って「どうしていけないんだ。何と言っても、言論の自由は神聖じゃないか」などと言うのはおかしい。
そんな愚かなことを口走るのは思い上がった米国人ならではだ。残念ながら、同様な背景と考え方は欧州のほかの新興右翼政党でも見受けられる。
EUへの攻撃の不条理
同じくらいばかげているのがEUへの攻撃だ。ここでもかなりの件数の混同が見受けられる。
国民国家というものは、欧州の政治にもともと備わっていた特徴ではない。造られたものであり、その多くはつい最近できたものだ(米国自体が造られたものであるのと同じだ)。
おまけに、これらの国々はたいてい流血の惨事を経て造られた。その結果のうえで想像された国民意識が、さらなる災難につながった。
EUが創設されたのは、そうした災難が繰り返される可能性を制御するためであり、理想的には排除するためだった。
戦争するくらいなら協力し合い、市場を開く方がいいというアイデアだった。NSSはこれを愚行だと断じている。
しかし、EUを維持する有力な理由がもう一つある。
EUの礎を築いた「ファウンディング・ファーザーズ」の一人でベルギー外相だったポール・アンリ・スパークはかつて、「欧州には2種類の国しかない。小さな国と・・・小さな国であるのにそのことにまだ気づいていない国の2種類だ」と語った。
超大国に牛耳られた世界、そして核兵器を保有するロシアに脅かされている大陸においては、力を合わせて一つになるか、あるいは犠牲者になるかのどちらかだ。
トランプがどちらを望んでいるかは疑いの余地がない。だが、なぜヨーロッパ人自身もそんなことを望むのだろうか。