米国などで景気指標の一部が改善したことや、米銀の黒字決算などを足場に株価が上昇。これがクロス円での円売りなどリスク投資の部分的な復活につながる動きが、3月から4月にかけて観察されてきた。しかし、そうした動きはいったん限界にぶつかった感が漂う。筆者は、楽観論に傾斜してきた局面に「潮目の変化」あり、と判断している。株高に依存して見られていた原油高やユーロ高円安などは、今般の米国株大幅安とほぼ同時に反転した。このところ上昇していた内外の長期金利についても、流れは変わり、低下余地を再度模索する局面に入りつつある、ないし入った可能性が高いとみている。
今後の長期金利動向を左右する要因についての筆者の考え方を、不等号を用いて書くと、以下のように要約される。2009年度補正予算における国債増発の年限別振り分けなど供給サイドの材料には、金利のトレンドを変えるような力は、もとよりない。投資家サイドとしては、1000億円単位の年限別増減への妙なこだわりは不要である。
根の深い世界経済悪化・信用不安+デフレ圧力増大+超低金利長期化>国債増発懸念
20日の米国市場で、主要株価指数が急落した。ニューヨークダウ工業株30種平均は4日ぶりに急反落し、前日比▲289.60ドル。終値は7841.73ドルで、4日ぶりに8000ドルの大台を割り込んだ。材料になったのは、大手米銀の1-3月期決算内容。景気悪化でリテールの債務不履行が増加しており、貸倒引当金を前年同期の2倍以上積み増したことが嫌気された。このほか、一部ウェブサイトが、米大手金融機関19行を対象として実施されているストレステスト(特別検査)の結果、16社が厳密には債務超過に陥っているという内容を掲載したことも、金融株の売りにつながっていた模様。米財務省の報道官は、ストレステストの結果を財務省はまだ入手しておらず、そうした話には根拠がない、と言明していた。
ニューヨークダウが直近安値をつけたのは、3月9日の6547.05ドル。「強気相場」入りの目安とされる、ボトムから20%上昇した水準は、7856.46ドルとなる。ダウはそこを超えて、一時8100ドル台まで上昇したわけだが、そうした動きには無理があることが、時間の経過とともに明らかにならざるを得ない。なぜか。米国経済の本格回復(=世界経済の本格回復、米企業収益の本格回復)の前提条件、(1)米国の過剰消費調整プロセスの一巡、(2)世界的な金融システム機能不全解消にメドが立つこと、の2点とも、満たされていないからである。