AMDの主力製品「Ryzen」(8月19日撮影、写真:ロイター/アフロ)
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 米エヌビディア(NVIDIA)の独壇場であるAI半導体市場に、地殻変動が起きている。

 10月上旬、AI開発をリードする米オープンAIが、半導体大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)と大規模な提携を発表した。

 これにより、AMDはエヌビディアの有力な対抗馬として、市場での存在感を一気に高めた。専門家は、供給元の選択肢が増えることで健全な競争が生まれ、AI開発全体の加速につながるとみる。

市場の景色を変えた大型契約

 今回の提携は、オープンAIがAMD製の次世代半導体「Instinct MI450」を含むシステムを、数十億ドル規模で購入するというものだ。

 注目すべきは、オープンAIがAMDの株式を最大約10%取得できる新株予約権(ワラント)を得る点にある。

 この資本関係を含む契約は、オープンAIがAMDの技術力を高く評価し、長期的なパートナーとしてその成長を後押しする強い意志の表れと見て取れる。

 この発表を受け、市場は即座に反応した。

 10月8日、AMDの株価は24%急騰し、2002年以来最大の上昇率を記録。これまでAI分野では期待先行と見られていたAMDが、トップ企業の「お墨付き」を得て、名実ともにエヌビディアの競合として認知された瞬間だった。

 米調査会社ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストは、これまで9割以上をエヌビディアが占めていた市場で、AMDが15~20%のシェアを獲得する可能性も出てきたと分析する(米CNBC)。

なぜ「第2の選択肢」が必要だったのか

 これまでAI開発者は、エヌビディア製半導体の高いハードウエア性能と、同社が提供する「CUDA」と呼ばれる盤石なソフトウエア開発環境に頼らざるを得ない状況にあった。

 しかし、1社への過度な依存は、供給不足や価格高騰といったリスクを抱えることになる。

 オープンAIのサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)は、AMDとの提携後もエヌビディアとの関係は維持するとしつつ、「世界ははるかに多くの計算能力を必要としている」と述べ、供給網を多角化する重要性を強調した。

 AI開発競争が激化する中で、特定の企業に計算資源の供給を左右される状況は、事業継続上の大きな課題だった。

 AMDという有力な選択肢が生まれたことは、オープンAIをはじめとするAI開発企業にとって、安定した開発基盤を確保する上で大きな意味を持つ。