オバマ米政権発足から、3カ月が過ぎた。大統領就任後100日間とされる「ハネムーン」が終わると、世論やメディアの視線は急速に厳しくなる。真価を問われる8年ぶりの米民主党政権は、実績を挙げようと必死になって政策課題に取り組むはずだ。
一方、日本の政界は閉塞感を打破できない。麻生太郎首相は不人気に苦悩しながら、ひたすら衆院解散を先送り。一方、政権交代を目指す民主党も、小沢一郎代表の政治資金問題でつまずき、政局の行方は一段と不透明感を増している。
しかし、日本政治の劣化など、世界は構ってくれない。「100年に1度」の経済危機が米国に一極主義からの転換を迫る中、オバマ政権は日米関係でも新たなステージを模索するはずだ。
米通商代表部(USTR)高官時代、日米交渉の最前線で活躍したチャールズ・レイク在日米国商工会議所(ACCJ)名誉会頭にインタビューを行い、日米関係の見通しなどを聞いた。レイク氏は近著『黒船はもう来ない!』(朝日新聞出版)で、「外圧」を使って国内改革を進めてきた日本の政治手法が、オバマ政権には通じないと主張する。その上で、自立した日本が米国と「大人の関係」を構築するよう提言している。(取材協力=JBpress副編集長・貝田尚重、撮影=前田せいめい)
チャールズ・レイク氏
1962年米国サウスカロライナ州出身。3~15歳まで日本在住。90年ジョージ・ワシントン大法科大学院で法学博士号取得。米通商代表部(USTR)日本部長や次席通商代表付法律顧問などを歴任し、日米貿易交渉の最前線で活躍。99年アフラック(アメリカンファミリー生命保険)入社、2003年社長、08年7月から会長。06年在日米国商工会議所(ACCJ)会頭、09年1月から名誉会頭
JBpress オバマ政権の滑り出しをどう評価するか。
レイク氏 100年に1度の経済危機、イラクとアフガニスタンの2つの戦争・・・。これだけの課題を抱え、就任した大統領は歴史的にも数少ない。
オバマ政権の政策は、「金融システムの安定化と強化」「大規模な景気刺激策」「中長期的な構造改革」の3つが柱になる。これに沿って、就任後わずか1カ月でガイトナー財務長官の金融安定化策が発表され、景気刺激法案が議会を通り、予算方針も示されたことは、歴史的なスタートとして大いに評価できる。
――米民主党政権には、伝統的に対日強硬イメージが強いが。
レイク氏 政権が移行しても、「日米関係がアジア太平洋地域の外交の基軸」との考え方に変わりはない。同盟国として様々な課題に、共に取り組んできた歴史は重い。地政学的リスクも含めて考えると、日米関係の重要性はさらに高まっているし、期待も大きい。
日米関係に変化があるとすれば、関係そのものよりも、外交戦略の在り方が変わるということではないか。外交・経済・軍事・政治・文化などあらゆるパワーを複合的に使い分ける「スマートパワー」を、米国は重視している。
日米関係で言えば、日本に対して圧力を掛け、日本が望まないことを無理矢理やらせるようなことはしない。
逆に日本から見れば、「黒船」はもう来ない。かつて「黒船」や「外圧」を利用して、日本が国内改革を進めてきた側面は否定できない。日本が国内政策上「しなければならない」と判断しているのに、あえて(日本人の)嫌米感情を増幅するような言われ方をされるのは、米国にとってマイナスになる。