(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年8月28日付)
Pixabayからの画像
ドナルド・トランプは合衆国憲法を尊重しなさすぎるといつも非難されている。
憲法が彼を封じ込める力の弱さを考えれば、より大きな問題はリベラル派が憲法を尊重しすぎていることなのではないだろうか。
三権分立というかの有名なチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)には、そうした壊れやすい仕組みが担える以上の大きな期待がかけられている。
トランプを止められないチェック・アンド・バランスの弱さ
連邦議会について考えてみよう。議会は今、米国で最も信用されていない機関だ。
共和党の議員たちはトランプの言いなりで、2020年の大統領選挙におけるジョー・バイデンの勝利を承認する投票では、そのほとんどが承認反対に回ったほどだ。
また、トランプは過去の大統領には見られなかったハイペースで緊急手段を繰り出しているが、立法府はこれにあまり抵抗していない。
司法府はどうか。連邦最高裁判所ではトランプが指名した判事が全体の3分の1を占めており、すでに大統領の権限や特権を寛大に解釈するに至っている。
(次の民主党の大統領も同様に遇されるのか、それともその段になって判事たちは法理学的な悟りを突然得るのか、見ものだ)
連邦の行政府については、トランプが閣僚やその直属の部下だけでなく、4000人前後の幹部職員を自ら指名することができる。
お気づきだろうが、これらはほぼすべて合法だ。
何か1つのルールに違反するまで、トランプは自分の思いつきに国家を従わせることができるのだ。
それは国家にとって何を意味するのか。
トランプ関税や、先日の米連邦準備理事会(FRB)理事解任の試みがたとえ違法であったとしても――後者の舞台は裁判所に移る――、そのような違反はトランプが体制を隅々まで牛耳っているという事実のほんの一部でしかない。