センターラインを越え、神農さんの車に突っ込んでくる加害者の車。この直後、神農さんの車に正面衝突する(被害者のドライブレコーダーのデータより)
2024年9月21日、高知県の高知東部自動車道下り線で中央線を突破した乗用車が、4人家族の乗る対向車に正面衝突。この事故で1歳の男の子が死亡、両親が重傷を負った。
加害者の男(当時60)は自車の運転支援システム機能を妄信して走行中に靴を履き替えていた疑いがあり、両親は「極めて悪質な、究極の“ながら運転”だ」と訴えている。事故から10カ月が過ぎ、厳罰を求める署名活動を始めた両親が、現在の思いをノンフィクション作家の柳原三佳氏に語った。
加害者からの謝罪は未だなし
「こうちゃんがいなくなってから、10カ月が過ぎました。楽しそうに水遊びしていた姿、ベビーカーに乗る後ろ姿、音楽が流れると踊る姿……、目を閉じると、今もあのかわいい姿が浮かびます。でも、それらはもう二度と更新されません。『きっと、こんなふうに成長していたかな……』と、想像することも難しくなってきました。ただただ、こうちゃんの成長を、家族皆で見守りたかったです」
そう語るのは、大阪府の神農彩乃(かみのあやの)さん(38)です。
神農さんは昨年9月、自動車専用道路で起こった正面衝突事故で、1歳1カ月の長男・煌瑛(こうえい)ちゃんを亡くしました。しかし、時間はあの日から止まったままです。刑事裁判はまだ開かれておらず、2025年7月30日現在、加害者は起訴されていません。また、重傷を負って長期入院していた彩乃さん自身、退院した後も加害者本人からの謝罪は一度も受けていないといいます。
「8月2日は、こうちゃんの2歳のお誕生日なんです。私たちはその日に合わせて高知へ行き、署名活動をする予定です。この事故の理不尽さを多くの方に知っていただき、自己中心的でありえない運転をした加害者に厳罰を処すことで、この先、私たちのように苦しむ被害者遺族が一人でも減ることにつながればと思っています」
事故で幼い命を奪われた煌瑛ちゃん(遺族提供)

