新NISAがスタートして初めての「プログレスレポート」が公表されたが・・・(写真:aomas/Shutterstock.com)
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(我妻 佳祐:ミニマル金融研究所代表)

 はじめまして。ミニマル金融研究所代表の我妻佳祐と申します。2006年から2019年まで金融庁に勤務し、コンサルティング会社などを経て、現在は光通信グループで、生命保険の理想を実現するためのプロジェクトに関わっています。

 今回からスタートするコラム名でもある「ミニマル金融」とは私の造語で、「必要最小限の金融サービスを利用して、無理なく家計に余裕を持たせていこう」という意味合いを込めたフレーズです。

我妻 佳祐(わがつま・けいすけ)1981年生まれ、山形県米沢市出身。99年、京都大学理学部数学科入学。2006年、京都大学大学院理学研究科修士課程にて生命保険の研究で修士号を取得する。同年、金融庁に入庁。保険、証券、開示、銀行等金融行政に幅広く関わる。14年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程を修了し、生命保険の研究で博士号を取得。19年に金融庁を退官。その後、アクセンチュア等のコンサルティング会社勤務を経て、21年に生命保険の買取サービスを提供する株式会社ライフシオンを設立。25年より光通信グループにてライフワークである生命保険の理想を追求する事業を開始する。

 この「必要最小限」というところがキモで、金融にあまり興味のない人でも「最低限」の知識を身につけて、世の中にあるさまざまな金融の仕組みを正しく使えるようになることを目指すものです。現状では多くの人が、ざっくりいえば、銀行のサービスはちょうどよく使えていて、保険は使い過ぎていて、資産運用(投資)は全然使えていないという状態にあると思っています。

 さて、連載の第1回はまず、昨今、多くの人が関心を持ち始めた「資産運用(投資)」について考えてみたいと思います。

 政府はもう30年近く前から、「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げて、資産運用(投資)を増やそうとしてきました。いまだにそのスローガンが掲げられているということは、資産運用(投資)は思ったほど増えていないということです。

 みなさんも「NISA(少額投資非課税制度)」という言葉を聞いたことはあるのではないかと思いますが、これは一定の資産運用(投資)にかかる税金をなくすことで、資産運用(投資)を増やそうという政策です。詳細は省きますが、これは文句なしにいい制度なので、しっかり活用すべきです。

 政府は「貯蓄から投資へ」を推し進めるために、2024年からNISA制度をアップデートし、より使いやすくしました。その新NISAがスタートしてから初めてとなる、あるレポートが金融庁から発表になりました。2025年6月27日に公表された、「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2025」です。

 これは、2020年から金融庁が資産運用業の現状について分析したレポートで、2024年度は公表されなかったのですが、今年2年ぶりに公表されました。

 このレポートは内容が物議を醸すことも多く、というか、「それはさすがにおかしいのではないか?」というような分析結果が公表されることもあり、ある意味で毎年楽しみにしていたのですが、2年ぶりに公表されたということで期待して読んでみました。

 内容は、2年前までのレポートとは大きく様変わりしていました。2023年レポートまでの投資家側・家計側の視点から分析したレポートではなく、業界内部のレポートのようなものになっています。

 ツッコミどころもあまりない代わりにレポートに生々しさがなくなり、コンサルにでも委託したのかという無機質な内容になっていて、プログレスレポートウォッチャーだった私としては残念でなりません。