誰もが知っている国民的キャラクターの「ドラえもん」。四次元ポケットから出てくる数々の「ひみつ道具」のユニークさと、ドラえもんとの交流を通してのび太が成長する姿が印象深い作品である。

 のび太が困っていると、ドラえもんは次々と「ひみつ道具」を取り出して問題の解決策を提示してくれる。ドラえもんのようなパートナー(システム開発会社やITベンダー)がいたら、企業の担当者はさぞ心強いに違いない。

「ひみつ道具」は顧客のニーズに合致しているか

 ドラえもんは最後の別れが来るまでのび太に長く寄り添い、問題解決をし続ける。そうした彼の考え、言葉、行動は、IT企業がクライアントにソリューションを提示する上で参考となる部分が多い。

 次々と登場する「ひみつ道具」は、瞬時に移動できたり、ちょっと食べるだけで願いがかなったりと、すべてがウルトラC級の代物である。しかし、この優れモノの品揃えがドラえもんのすごさかと言うと、必ずしもそうではない。

 正確に言うと、優れているのは、「困っている人(のび太)が何を必要としているかを理解して、その時に最適なものを提供している」点だ。例えば「移動する」というニーズでも、何かを探しながら移動する場合は「タケコプター」。効率性を追求して瞬時に遠方に移動する場合は「どこでもドア」といったように。

 ただ単に「いい道具」を持っているだけでは、問題を解決できない。泣きわめいているのび太の言葉から背景や真意を理解して、自分の手持ちの解決策からベストなものを引っ張り出す。ここでドラえもんがミスをすることはない。本当のソリューションである。

 クライアントのニーズとギャップがあるのにもかかわらず、自社の用意する「○○ソリューション」「プロダクト」を半ば無理やり提供しようとするシステム開発会社やベンダーが存在する。こういうスタンスは、ドラえもんとはほど遠い。