日銀は昨年12月に続いて、今年3月にも長期国債買い入れを増額した。その際に金融政策決定会合内で行われた議論の概要が、10日朝方に発表された金融政策決定会合議事要旨(3月17、18日開催分)から明らかになった。日銀の今後の動きを推測していく上で、示唆に富む部分がある。
議事要旨によると、3月会合では、年度明け後についても「厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い」という見方で、委員は一致。この点を踏まえて行われた長期国債買い入れについての議論では、次のような発言があった(議事要旨の記述を基に構成。太字は筆者)。
多くの委員「長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくために、長期国債の買い入れを増額することが適当ではないか」
何人かの委員「増額する場合には、年度明け以降の市場安定に向けた日本銀行の強い意志を示すためにも、銀行券ルールのもとで、出来る限り大幅な増額を行うことが適当である」
議事要旨の上記記述からは、3月に決まった長期国債買い入れの増額は、執行部ではなく、委員の側から自発的に言い出された話であり、しかも、「市場安定に向けた日本銀行の強い意志を示す」ためにも「出来る限り大幅な増額」をすべきだ、という意見が、1人や2人ではなく、それよりも人数が多い「何人かの委員」から提起されたことが分かる。筆者にとって、これは驚きだった(むろん、それら委員が総裁と副総裁2名だった可能性も解除できないが)。延長して思考を展開すると、追加経済対策に伴う国債増発への懸念から債券相場が足元で軟調に推移し、長期金利上昇が景気に悪影響を及ぼすリスクをマスコミ各社がこぞって取り上げつつある中で、日銀のボードメンバーが何もせずにじっとしているとは考え難くなってくる。むしろ、「市場安定に向けた日本銀行の強い意志を示す」必要が増しているという判断のもと、国債買い入れをさらに増額する余地はないのか、という声が、次回以降の決定会合では、出てきやすいのではあるまいか。
3月会合議事要旨の記述を、もう少し追っておこう。
長期国債買い入れについては年間5兆円程度の増額が可能、というラフな試算をある委員が示した後、執行部から、次のような説明が行われた。
残存期間別買い入れ方式の導入によって、長期国債の満期構成を、厳密ではないにせよ、ある程度コントロールできるようになった。このため、銀行券ルールのもとで、従来の増額幅以上に買い入れ額を増やすことが可能となっており、具体的には年4.8兆円の増額が可能。ただし、このペースで買い入れを行っていくと「数年間のうちに」銀行券発行高に近接していく可能性が高く、追加的な買い入れ余地は「自ずとかなり限定されてくる」。上記執行部説明に沿って、実際に、年4.8兆円(月4000億円)規模で、長期国債買い入れ増額が決まった。