AIシステム改良、マルチモーダル方式

 このシステムは、3Dスキャンや商品画像のカタログ、ビデオ映像、棚の重量センサーといった複数の入力情報を使用して、買い物客が購入したものや、その個数を判別する。アマゾンは24年7月、Just Walk Out技術を支えるAI(人工知能)システムを改良し、店舗内のすべての入力情報を同時処理できるようにした。

 このマルチモーダル方式では、買い物客がどの商品を手に取って、再び棚に戻したかをより正確に把握・予測する。そのためレシート発行の高速化も可能になった。シアトルにある多目的スタジアム内の導入店舗では、売り上げが約2.1倍に増加し、競技中に行われたトランザクション数は85%増加したという。

アマゾンの事業成⻑パターン

 アマゾンの元幹部によれば、同社の「注力点」はサードパーティー企業へのテクノロジーの販売と、中小規模の店舗への導入だという。直営店を実験室としてシステムを開発し、それを外販するというスタイルはアマゾンがこれまで取ってきた手法と同じだ。

 同社にはクラウドサービス事業「Amazon Web Services(AWS)」がある。このクラウドシステムはもともと自社の電子商取引(EC)事業向けに開発されたものだったが、同社は06年にこれを他の企業に貸し出す事業を始めた。

 同社はECマーケットプレイス商品の倉庫保管と配送などを代行する「Fulfillment by Amazon(フルフィルメント・バイ・アマゾン、FBA)」を出品者に提供している。これは自社のフルフィルメントセンター(発送センター)などの物流ネットワークを活用した、サードパーティーセラー向けサービスである。

 アマゾンはまず、自社の事業のためにプラットフォームを開発する。それが成功すると規模を拡大する。やがて余剰能力が生まれる。それを活用すべく外販を始める。これがアマゾンにおける事業成長のパターンだ。

 同社は20年、Just Walk Outシステムをサービスとして販売開始。同システムには幅広い応用性があるとみており、他の小売企業や競技場、オフィスビルなどに積極販売している。