マーケットプレイスはアマゾンの中核事業

 アマゾンは、出品者が生成AIを用いて動画広告を作成したり、自社カタログに基づく商品リストを作成したりできるツールも導入する。これに先立つ23年10月、同社が1億6000万人を超えるPrime(プライム)会員のデータを利用して、閲覧・検索・購買履歴に基づくターゲティング広告を改良し、出品者の商品プロモーションを支援する、と報じられた。「Amazon Personalize(アマゾン・パーソナライズ)」と呼ぶAIツールでは、ターゲットを絞った商品説明を作成できる。同社は商品画像の作成にも生成AIを活用している。出品者の商品をより目立たせることが目的だとしている。

 アマゾンのEC事業において、サードパーティセラーと呼ばれる出品者が果たす役割は大きくなっている。同社はこうした外部小売業者が出品する「マーケットプレイス」事業を急拡大してきた。2017年ごろからは、その流通取引総額(GMV)が同社ECサイト全体の半分以上を占めるようになり、24年4~6月期はその割合が一層拡大し、61%に達した。今やマーケットプレイスは同社の中核事業となっている。同社がAI活用の出品者向け業務効率化サービスを拡充するのには、こうした背景がある。

AI投資拡大、「Rufus」「Bedrock」「Q」も開発

 米グーグルや米マイクロソフトなどは、今後10年で1兆米ドル(約142兆億円)規模に成長するといわれる市場において、AI活用の新たな製品を相次ぎ発表し、激しい競争を繰り広げている。アマゾンも昨今のAIブームを受け、生成AI分野への投資を増やしている。

 同社は23年に顧客向けに商品レビューの要約を始めた。24年2月には商品購入を支援するチャットボット「Rufus(ルーファス)」を追加した。こちらはアマゾンのモバイル向けショッピングアプリで利用できる。

 23年4月には「Amazon Bedrock(ベッドロック)」と呼ぶ生成AI開発サービスを発表した。同社のクラウドサービス部門、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供しており、顧客企業が独自の生成AIシステムを開発できるようにするものだ。23年11月には、生成AIを使ったアシスタントサービス「Amazon Q」を発表。こちらは企業における業務用途を想定したチャットサービスだ。加えて、消費者向け音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」にも生成AIが導入されると報じられている。

 アマゾンのCEO(最高経営責任者)、アンディ・ジャシー氏は、年初に開いた投資家向け説明会で、「生成AIは前例のないほどの大きな可能性を秘めている」と述べた。24年4月の決算説明会では、「テクノロジーの分野で、このような可能性を目にしたことは長い間なかった。クラウドが登場して以来のこと、おそらくインターネットが登場して以来のことかもしれない」と述べ、生成AIがもたらす変革の大きさを強調した。