こうして中国のAI開発は一定の制約を受けている。だが性能が低いプロセッサーを利用することで開発を継続することは可能だ。

 FTによれば、エヌビディアは今後数カ月で、中国に向けて100万個以上のプロセッサーを出荷するとアナリストはみている。単価は1万2000~1万3000米ドル(約170万~190万円)になる。

 半導体市場調査会社の米セミアナリシス(SemiAnalysis)によると、特に購入量が多いのは動画投稿アプリ「TikTok」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)だ。バイトダンスはH20を数十万個購入しているほか、マレーシア南端ジョホール州に大規模なコンピューティングインフラを構築するために、パートナー企業との連携を強化している。

 同社は500億米ドル(約7兆2400億円)を超える豊富な資金力を背景に、AI技術の開発に力を注いでいる。

 セミアナリシスのディラン・パテル氏は、「バイトダンスは中国やマレーシアへの大規模投資のほか、米国のクラウドサービスも購入しており、中国で最大のAI購入企業だ」と話している。

クラウド経由で先端半導体にアクセス

 英ロイター通信は先ごろ、中国政府と関係のある組織が、米アマゾン・ドット・コムなど米国のクラウドサービスを通じて、米国の先端半導体にアクセスしていると報じた

 米政府は、過去2年間にわたり先端AI半導体の対中輸出規制を強化してきた。しかし、これらへのアクセスをクラウドサービスを通じて中国組織に提供しても規制には抵触しない。

 中国のテクノロジー大手も、こうしたクラウドサービスを利用し、米国の先端半導体にアクセスしているのかもしれない。米国との技術覇権争いが激化する中、AI分野での優位性を確立したいと考えているようだ。