プロ野球パリーグで、千葉ロッテマリーンズの調子がいい。吉井理人監督が指揮を執って2年目。リーグ2位に食い込んだ昨年に続き、今季もシーズン終盤へと向かう中で上位を走る。現役時代はセパ両リーグとメジャーリーグで活躍し、指導者としては米ドジャースでの留学経験もある吉井氏。強いチーム、強い組織を作るために欠かせないという、吉井監督独自の理論とは?
(*)本稿は『機嫌のいいチームをつくる』(吉井理人著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・再編集したものです。
◎前編『「10対0」でリードの8回、千葉ロッテ・吉井監督が先発投手に完投させないワケ…“初の試み”がもたらした答えとは』 から読む
偶然のコミュニケーションを創出する
監督として、全体を把握するコミュニケーションとして気をつけているのは、機会を見つけて選手と話をすることだ。野球の話だけでなく、雑談でも挨拶だけでもいい。機会さえあれば会話はできる。コミュニケーションを取りながら、選手の様子を見て回る。
監督が直接現場に足を運び、選手を見る行為は重要である。それは、コーチやスタッフに対しても同様である。理想を言えば、球団に関わるすべての人と話をしたいが、なかなか全員というわけにはいかないので、時間の許す限り話しかけるようにしている。
組織のトップをイメージすると、忙しくて時間もないこともあり、あまり現場の人たちと話をしない印象がある。私は、その弊害をずっと感じていた。
野手出身の監督は、ピッチャーとあまり話をしない。おそらく、ピッチャーのことがわからないため、何を話していいかわからないからだろう。練習中にピッチャーのところに足を運んで話をしている姿をあまり見たことがない。
対して、野手のバッティング練習では話をしている。もちろんピッチャーとまったくコミュニケーションを取っていないわけではない。ピッチャーがブルペンでピッチング練習を行うときなどには顔を出してなんとかコミュニケーションを図ろうとしている。
反対に、ピッチャー出身の監督が野手のところに話をしにいくのはハードルが低い。少なくとも、私は何の支障もない。それは、ピッチャーが野手の研究をしているからかもしれない。選手のロッカールームにもズケズケと入っていける。
監督が選手のロッカールームに入っていくという話は、あまり聞かない。私はコーチ時代から日常的に行っていたので、選手たちもそれほど違和感を覚えていないようだ。