YouTubeを普通に見る高齢者もたくさんいる(写真:15Studio/shutterstock) YouTubeを普通に見る高齢者もたくさんいる(写真:15Studio/shutterstock)

 マーケティングの世界では長らく、「シニア」「高齢者」を主要なターゲットから外してきた。しかし高齢化が進む今、シニアというボリュームゾーンを無視するのはあまりにももったいない。衰退する日本経済の要因が少子高齢化だからこそ、子どもを増やす議論と合わせて、いかにシニアを活かすかも問われている。

 シニアにはどんな消費ポテンシャルがあるのか。どんなコンテンツが刺さるのか。『「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル』(日経BP)を上梓したマーケティングアナリストで芝浦工業大学デザイン工学部教授の原田曜平氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──本書のタイトルは『「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル』です。この本はどんな本ですか?

原田曜平氏(以下、原田):「さとり世代」「マイルドヤンキー」などの流行語を生みだしたりもしましたが、私が長らくしてきたのは若者研究です。でも、今回初めて全国の様々な60歳以上のシニア層に関する調査を手がけました。それをまとめたものです。

「2025年問題」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、ビートたけしさんなどの団塊世代(戦後の第一次ベビーブーム生まれ世代)までが、後期高齢者になるということです。

「後期高齢者になる」とは、平均健康寿命の75歳を過ぎるということです。こうした年齢に達すると、徐々にお酒も飲めなくなりますし、テレビも見られなくなります。コンビニにも行けなくなりますし、介護施設に入り、認知症になる。つまり、ここから本当の介護時代に突入するのです。

 これまでは「前期高齢者が増えた」というだけで、皆さんまだお元気で、お金も持っていますし、実は何の問題もない高齢化社会でした。でも、2025年以降は大いに問題のある、人類史上初めてのステージに日本は入ります。

 これはかなり大きな歴史の転換点です。この新しい次元を少しでも予測するものを書きたいと思いました。

──若者研究からシニア研究へ大胆な転換ですが、難しくなかったですか?

原田:若者研究をやり始めて10年ほど経った時に気がついたのですが、若者研究はかなり未来研究に近い。自分が書いた本を読み返すと分かるのですが、20年前に若者が言っていたことが、現在の社会の中で実現されていることもあります。

 高齢者研究もまた、2025年以降を考える未来研究の要素があります。もしここでいい解決策を提示することができたら、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、世界中で進む高齢化問題に横展開していくことができる。

「課題先進国」という言葉がありますが、この分野の研究が世界にあまり前例がないからこそ、世界でも一番高齢化が進んでいる日本が世界最先端でこうした研究をすることには意義があると思います。