企業では従業員のキャリアアップにつながる資格取得を促す「リスキリング」が重視されているが、これまでも自らさまざまな資格を取得し、仕事やライフスタイルに役立ててきた人は多い。当サイトで高齢者の孤独死や賃貸住宅入居拒否問題などを取材してきたルポライターの佐藤美由紀氏も、昨年、人気資格の一つである「宅地建物取引士(宅建士)」の国家資格を取得した。しかも受験を思い立ってから3カ月での“スピード取得”。いったいどんな目的で受験し、どのような勉強法で合格を勝ち取ったのか──。(JBpress編集部)
ダメ元で宅建士を目指したきっかけ
2023年10月15日、全国各地の会場で「令和5年度宅地建物取引士資格試験」が行われていた。宅建業には縁もゆかりもない筆者も、緊張しながらその会場にいた受験者の一人だ。
宅地建物取引士とは、不動産取引には欠かせない国家資格の一つで、試験は年1回、毎年20万人前後が受験する。試験範囲は民法、宅建業法、法令上の制限、その他関連知識から計50問出題される。合格率は16%前後で必要勉強時間は300~500時間が目安とされるなど、決して簡単とはいえない試験だ。
前々から受験しようと思っていたわけではなく、7月上旬に突然思い立った末の挑戦だった。
特殊清掃や孤独死、高齢独居世帯の賃貸住宅入居拒否問題などを取材するうちに、少しでも専門的な知識があったほうがいいかもしれない、また、将来的にはそうした人たちを手伝えるような仕事ができたらいいな、という漠然とした考えから受けてみようと思ったのである。
実際、筆者の身の周りでも、伯父の家の生前整理や売却があったり、知人の高齢者から「賃貸物件が借りられない」という相談を受けて物件探しを手伝ったりしたこともあり、より一層問題を身近に感じたことも受験を後押しした。
そこで、さっそく試験日を調べてみると、試験日は10月15日、申込期日は7月31日までと締め切りが迫っていた。慌てて本屋に行き、申込書を手に入れ、宅建士の業務内容や試験範囲などを軽く予習できるような簡単な書籍を一冊買って帰った。本を読み、本当に受験するのか、勉強はできそうか、間近に迫った今年ではなく来年の受験にするか、など決めようと思ったのである。
本は数日で読み終わり、試験範囲の勉強が面白そうと思ったことと、仮に不合格だったとしても賃貸物件に住む身としては、少しでも知識を身につけることはいずれ何かの役に立つかもしれない、とダメ元で挑戦を決意し申し込んだ。