アジアの留学生抜きに大学院の運営は考えられない(写真は東京大学)

 8月25日、政府の諮問機関である「教育未来創造会議」が設定した「2033年までに(日本から海外への)留学生を50万人にする目標の実現に向け、文部科学省が2024年度、給付型奨学金の対象者を現在の7割増にあたる3万人に増やす方針を固めた」との報道がありました

 新型コロナウイルス感染症の蔓延以前、日本から海外への留学生は1年あたり22.2万人であったのを、2倍以上の50万人を「海外に送り出す」という。

 また逆に、海外から日本への外国人留学生は、31.8万人を年40万人に増やすという。

 このアウトラインをもとに、日本の高等学術・人材育成政策の現状と問題点、もっとはっきり記すなら業病というべき体質を検討してみましょう。

人材育成、二重の「輸出超過」

 まず頭数から考えてみます。「日本人対象の留学生支援」が50万人、これに対して外国人留学生支援が40万人。

 頭数だけ比較すれば「日本人向けのサポートの方が10万人多いのです!」という、まことに国民納税者向けに説明がつきやすそうに見える数字です。

 でもここで、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

 日本人が海外に留学するために拠出するお金、原資はまちがいなく日本国民が収める税です。

 その方が多いというのはどういうことか。

 海外から迎える外国人留学生向けのサポートはお金が国内で循環します。一方で、海外に出て行く留学生は、要するに海外で日本の国富を消費するわけです。

 つまり、お金のプラスマイナスを考えれば、日本国内から出て行く額がたくさんあることになる。