ロシアとウクライナの消耗戦をどう終結させられるか、さすがのプーチン氏も頭が痛いはずだ(6月28日タジキスタン訪問で、写真:ロイター/アフロ)

 ロシアがウクライナへの特殊軍事作戦を始めてから1年半が経過した。その不幸が日常化する中で、ウクライナ軍による反転攻勢が鳴り物入りで始まってから既に3か月近くが経つ。

 当初の期待に反して反転攻勢が成果を挙げていない、といった論評や批判があちこちから出るたびに、否定や反論をウクライナ政権と米国は打ち返す。

 ウクライナ南部の一部でようやくロシア軍の第1防衛線を突破したとの報が流れ、着々と反攻作戦は遂行されていると、彼らは説明に余念がない。もちろん成果はないわけではない。

 だが、ロシアが築いた複数の防衛線を秋か冬までに突破してアゾフ海に抜けるという当初の目論見は、かなりの難事と大方が認めざるを得ないようだ。

 そればかりか、クリミア奪還まで含めた勝利の方程式がそもそも解不能の代物だったのではないかとか、不可能ではないにせよ短期間での実現は無理だとかの見方すら、当の米国やウクライナからも漏れ伝えられる。

 期待外れへの反動からなのか、これまでほとんど報じられてこなかったウクライナと西側にとっての不都合な話もメディアに現れ始めている。

 以前から指摘されていた西側からの兵器供与の遅れに加えて、戦意や士気に欠けるのはロシア軍だけではなく、実はウクライナ軍も同じような問題を抱えているという。

 あるいは、最初の思惑を外したウクライナのV.ゼレンスキー大統領以下の政権が、これからどうするかを巡っての様々な議論に内部で直面しているともいわれる。

 つい3か月前までは、「もう一押しすればロシアは潰れる」と言わんばかりの勇ましい見解も散見されたものだった。

 戦局次第で報道のニュアンスは変わり、その先を見込んだ大局観がそこで示されるとは限らない。

 それを責めるつもりはないのだが、最初から分かっているはずの話までとなると、何をいまさらの感は残ってしまう。

 最近では、NATO(北大西洋条約機構)関係者が「奪われた領土を諦めて、NATOに加盟すればよい」と発言して、ウクライナ側の反発を喰らった。

 最後は、その発言の取り消しに追い込まれたものの、NATO内にそのような見方が存在したり、議論の対象になったりしていることが表沙汰になっただけの話だろう。