記者仲間が集まると、天下国家を語り合い、朝まで飲み明かす。しかし、最近の酒席の話題は、マスコミ自身の経営難になりがちだ。各種規制に守られた新聞業界などは、経営改革を怠る間にIT革命に見舞われ、「日本語が読める」人口の減少に直面した。今、この構造不況業種は未曾有の広告不況に追い討ちを掛けられ、「冬の時代」どころか「氷河期」を迎えた。早急に抜本改革を断行しないと、巨大メディアは恐竜と同じ運命をたどるかもしれない。

 電通によると、2008年の国内総広告費は5年ぶりにマイナスを記録し、前年比4.7%減の6兆6926億円に落ち込んだ。「特需」となるべき北京五輪は、昨秋以降の世界金融危機に吹き飛ばされてしまった。

 だが、すべてを不況のせいにできない。インターネット広告は伸び率が鈍化しながらも、6983億円(16.3%増)を確保した。これに対し、4年連続マイナスの新聞は8276億円(12.5%減)と1980年代の水準まで後退している。テレビも2年連続で2兆円の大台を割り込み、1兆9092億円(4.4%減)。雑誌は4078億円(11.1%減)となり、ネットの6割程度まで落ち込んだ。

トヨタが右向けば・・・横並びの経済界

 しかも広告不況は、2008年に底を打ったわけではない。それどころか、足元は「底なし沼」のような状況なのだ。

 マスコミ業界の経営陣には、背筋の寒くなるような数字がある。電通が毎月公表する同社単体売上高を見ると、昨年11月から4カ月連続で減少中。とりわけ、新聞広告は2ケタ減が恒常化し、2月は前年比36.7%という記録的な落ち込みだ。

 テレビも北京五輪閉幕後はマイナスが続き、ついに2月は2ケタ減。雑誌も回復のめどが立たず、2月は24.9%減少した。既に「月刊現代」(講談社)は姿を消し、「諸君!」(文芸春秋)も6月号で休刊する。「左」「右」を問わず、出版界の老舗が苦境に陥っている。

 「今回の広告不況はトヨタ不況だ」。テレビ局の幹部は、世界最大の自動車メーカーに矛先を向ける。2008年度決算で巨額赤字の計上が必至のため、トヨタ自動車は1000億円超の広告宣伝費を約3割カット。2009年度もさらに2割以上削減すると伝えられている。

 トヨタが右向けば、日本の産業界全体が右を向く。有力企業は相次いで広告宣伝費を減らし、それがマスコミ業界を苦しめる。モノが売れない時こそ広告が必要のはずなのだが、横並びの経済界には通用しない。

 企業が経費削減を競い合い、家計も財布のひもを固く締める。それが売り上げ減として企業に跳ね返り・・・。永田町が政争に明け暮れている間に、日本経済は典型的な悪循環に陥ってしまった。