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文=小嶋多恵子 写真=小嶋淑子 

 コロナ禍も相まって自由な働き方へのハードルが下がっている現在。将来、後悔しないための自分軸な働き方とは? キャリアを振り返り、未来をイメージし、独立・複業・起業といった選択肢が浮かんできたら、次の一歩はどう動けばいいのだろうか。女性のキャリアコンサルティングをおこなう〈Waris〉代表取締役・田中美和さんと女性起業家を支援する〈女性社長.net〉代表・横田響子さんにお話をうかがった。

自強みに気づき、スキルを伸ばせる越境体験

――独立・複業・起業を考えたときに、まずは何から手をつければいいでしょうか?

田中:小さな一歩から始めてみましょう、とお話しさせていただいています。やっていけるかわからないということであれば、それこそいきなり独立するのではなくまずは副業として始めてみる。あとはもっと手前のところで“越境体験”をおすすめしています。いわゆるボーダーを越えること、いつもの自分とは違う環境に身を置いてみるんです。

 私も会社員時代にNPOでボランティアスタッフとして働いていて、そこでは普段の職種とは異なる営業や広報の仕事をさせてもらっていたんですが、自分が独立した時にものすごく役に立ったんです。こういった小さな越境体験をおすすめしたい理由にはもうひとつ、自分自身の強みに気づけるということがあります。

 私の場合、元々出版社で記者の仕事をしていたので文章を書くことは極めて日常的な行為だったのですが、会社を一歩出たところで働いたことで、文章を書けるということがすごく価値があることだと気づけたんです。「田中さんの書く文章はすごくわかりやすいからホームページの文章書いて」とか、「SNSの文章を書いてほしい」とか。出版社で働いているとまわりはみんな文章が上手に書ける人たちばかりですから、特段それが自分の強みだと思ったことがなかったんですが(笑)。

 一歩外に出てみたことで言語化能力に価値があること、それが自分自身の強みになるんだと気づき、自信にもなりました。また、会社以外の世界に踏み出すことで人的なネットワークが広がることも魅力です。人間関係がすごく豊かになって、独立した時の大きな助けにもなってくれました。

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 ひとことで人脈といってしまうと無機質に聞こえてしまうかもしれませんが、人とのつながりは本当に大事です。副業、フリーランス、起業すべてに共通していえることですが、ゼロから自分でやるってリソースが足りないんです。そこから何かをつくっていく、成し遂げていくには周りの存在がすごくありがたい。そういう意味では、会社員時代はもちろん、ちょっとした越境体験でも、知り合いの会社のお手伝いだっていい。人脈を築いていくことはとても有意義なこと。副業がNGとされている会社員の方は、私のようにNPOなどボランティアをするのもいいと思います。お金が入ってこなくても、得られる経験や知見、ネットワークは何にも替えがたい将来への投資になります。