2021年10月5日で、スティーブ・ジョブズが亡くなって、ちょうど10年になる。
マッキントッシュ・コンピュータからiPhone、iPadまで、数々の先駆的な製品を世に送り、IT界の革命家となったジョブズは、今なお多くの人に信奉される。
人々はなぜ彼に惹かれ、彼の思想が宿る製品を愛するのか。
2021年8月に刊行された『あの日ジョブズは』(ワック)は、作家・片山恭一氏の考察と、写真家・小平尚典氏のポートレート写真によって、その人物像に迫っていく書籍だ。この本に込めた思いを、2人に語っていただいた。(菅谷 淳夫:フリーライター)
ジョブズの人間性を掘り下げたい
──この本を作るに至った経緯を教えてください。
小平尚典氏(以下、敬称略) 僕は1987~2005年に報道カメラマンとして、現代のIT全盛の世の中をもたらした先駆者たちの写真を撮ってきました。AI時代を迎えつつある今、その源流にある彼らの活動を思い返すことが増えたのです。
そしていつしか、ジョブズについて作家に書いてほしいという思いが強まりました。ジャーナリストや関係者による評伝はありますが、そこには歴史は書かれていても、彼の人間性はあまり描かれていないように思えたからです。
とくに禅に傾倒し、京都を何度も訪れたジョブズについては、日本人にしかわからない部分があるかもしれません。そこで昔からの友人で、2人でシリコンバレーをはじめ、アメリカ各地を旅したことがある片山恭一さんにお願いしました。